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【ビンタ】藝術家フリンガ=バ=レタの作品たち
フリンガ=バ=レタ(1470~1527年・イタリア) 盛期ルネサンスにおいて細々と活動していた藝術家。作品のモチーフとして『男女の修羅場』を多く取り上げた異端児であり、結果として評判は芳しくなかったとされる。 以下に彼の遺した作品の一部を紹介しよう。 【1枚目】 題名『平手』 怒りの形相で吠え、夫に平手打ちをする妻を描いたとされる作品。怒鳴り声さえ聞こえてきそうな迫力をたたえた一枚であり、現代においても主に恐妻家から一定の評価を得ている。描かれた男性は初撃を左手で止めたようだが、次いで襲い来る二撃目に対応できないでいるようであり、この後頬がはれ上がった事だろう。 【2枚目】 題名『露見』 夫婦それぞれの一族が集まったパーティにおいて夫の不倫が露見した場面ではないかとされる作品。夫はいかにも色男のように描かれ、遊んでいそうな印象を与える。妻はそんな夫に掴みかかり、不実な行為について問い詰めているようだ。熱くなる夫婦に対し、周囲に集った家族たちの呆れたような冷めた視線が良い対比となっている。 【3枚目】 題名『圧』 こちらは恐らく、喧嘩の最も激しい山を越えた後であろうと見られる。妻が夫の首筋にそっと手を伸ばし、有無を言わさぬような視線で静かな怒りを浴びせているようだ。夫は委縮している様子であり、自身の心臓の上に添えられた実に所在なさげな左手が「緊張・動揺・恐怖」をよく表現している。 【4枚目】 題名『示談』 レタの作品において珍しく、女性が笑顔を浮かべた一作。沈んだ表情の夫が抱える大量の紙幣、その紙幣に微笑みながら手を伸ばす妻。「生涯の愛」をないがしろにした代償はたいそう高くついたようである。イタリアにおいて離婚の手続きはかなり面倒である事から、この夫は一生妻に逆らえないまま人生を終えただろうと思われる。