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【入学式】マジカヨ達の入学式の日
それは一年前の入学式の日の事だったんだ。私はワクワクいっぱいでこの学校にやって来て、これから始まる中学生生活にドキドキしてたの。なんかね、小学生から中学生になった時って一気に大人になった感じしない?私だけかなあ? 「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます」 校長先生の長い話の間もずっとそわそわしてたんだよね。でも校長先生の後にも偉そうな来賓のおじさんとかが控えてて、入学式が終わるのすっごい待ち遠しかったな。その後、入学式が進んでいって「新入生、退場」で講堂を出るまでがすごい長く感じたもん。それで教室に向かう途中、しゃがみこんじゃった女の子がいたんだよね。それが朝霞ちゃん。 「ね、ねえ!大丈夫?」 「ご、ごめんなさい・・・気分が、悪くって」 顔も赤くて息も荒くて、ちょっと熱っぽい感じがしたから先生に言って朝霞ちゃんを保健室に連れて行ったの。保健の先生が言うには「環境が変わって緊張とかから体調を崩す子は珍しくないからね」って事だったんだけど、朝霞ちゃんはそれに加えてさらに体が弱い子だったから、その日はそれで早退する事に決まっちゃった。 保健の先生が「花畑さんはもういいから、自分の教室に向かいなさい」って言うから教室に向かおうと静かになった廊下を歩き出したの。そしたら今度は、講堂の方からなんかヒステリックな叫び声が聞こえたんだよね。ちょっと気になってこっそり見に行ったんだ。そしたら、美空ちゃんと生活指導の女の先生が言い争いをしてたの。校舎から講堂に繋がってるあの渡り廊下のところね。 「いい加減にしなさい!どうして素直に認めないの!一言『タバコを吸ってすみませんでした』って言えばいいだけなのに!」 「話が通じねェな。吸ってねえっつってんだろ。オレはここで吸い殻を拾っただけだ。やってもいねえ事を謝る筋合いはねェ。オレがタバコを吸ったってんならよォ、その証拠を出せって言ってんだよ」 「吸殻を持っていただけで十分でしょう!ここは禁煙なのよ、この学校の先生たちは誰もこんなところでタバコを吸ったりしないんだから、あなたが吸ったとしか考えられないの!」 どうも、美空ちゃんがタバコの吸い殻を持っていたのを見つけた生活指導の先生が美空ちゃんを捕まえてお説教してたみたいなの。私は物陰からそっと二人を見てたんだけど、美空ちゃんは怖そうな先生相手に一歩も引かないで言い合いしてたんだ。 「持っていただけで吸った事になんならよォ、今その吸い殻を持ってるアンタも『タバコを吸った』って言われても文句言えねェぞ?だがアンタは吸ってねェだろ。つまり、タバコを持ってた=吸ってたってのは成立しねェんだよ」 「ああ言えばこう言う!本当に頭にくる子ね、親の顔が見たいわ!」 「悪いな、共働きでね。この入学式にも来てねェ」 「親の顔が見たいっていうのはあなたみたいな躾の悪い子に呆れたって意味よ!言葉通りの訳がないでしょう!まったく、人の揚げ足をとる事ばっかり言って屁理屈を並べて!」 その言葉が出た途端、美空ちゃんの空気が変わったのが分かっちゃった。多分、あの時キレたんじゃないかな。 「屁理屈だァ!?おいアンタ、屁理屈ってのはなァ、筋道が立たねェ理屈の事を言うんだよ!オレの言い分のどこに間違いがあるってんだ!?『タバコを持っていたとしても吸っていた事にはならねェ』『オレが吸っていたと主張するならその証拠を出せ』『やっていない事に関して謝る事はねェ』!どれも至極真っ当な話だと思わねェか!その吸い殻からオレの唾液でも検出されたか!?オレが吸ってた瞬間の写真や動画があんのか!?オレがタバコに火をつける道具を持ってたか!?どれもねェ!全てはアンタの決めつけなんだよ!タバコの吸い殻を拾っただけで不良扱いたァ、筋道が立たねェ物言いをしてんのはどっちだ!あァ!?」 物凄い剣幕で生活指導の先生を怒鳴りつけ始めちゃって、もう先生の方が怯んでたよ。そしたら騒ぎを聞きつけたのか、学年主任のおじいちゃん先生が走って来てさ。 「すみません、その吸い殻は来賓の志賀さんがポイ捨てして行ったものなんです。式の直前までここの窓から顔を出してタバコを吸っておられたんですが、私が呼びに行った際に吸っていた途中のタバコを廊下に落として足で踏みにじって消火してから式に向かったんです。私も志賀さんをご案内しなくてはならなかったので、後で拾おうと思ってそのままにしてしまいまして。今しがた、志賀さんをお見送りしたところで戻って来たんですが」 もう、生活指導の先生は耳まで真っ赤だったね。それでも謝るのだけは嫌だったのか、美空ちゃん相手に「疑われるような行動は慎みなさい!」なんて吐き捨ててその学年主任の先生と一緒に立ち去って行っちゃったんだ。 「へっ、情けねェ。筋も通せねェあんな大人にはなりたくねェな」 残された美空ちゃんは勝利の笑みを浮かべて、すごくかっこよかったなぁ。 「そんな事があったから、私は絶対美空ちゃんと友達になりたいって思ったんだ」 「なんで見てんだよ!生徒に知ってる奴はいねェと思ってたのによォ!」 二年生の教室で喋る私たち四人。菫ちゃんが「どうして花畑さん達は友達になろうと思ったのか聞いてもいいかしら」って言うから、出会いのきっかけの話をしたんだけど。美空ちゃんなんか恥ずかしそう。 「私もあの時、梨々花ちゃんに助けてもらったのが仲良くするきっかけだったかも」 朝霞ちゃんは優しい笑顔で私を見てる。なんだっけ、こういう表情。 「パンデミックスマイルだっけ。ほら、仏様の笑顔みたいなの」 「アルカイックスマイルだボケ。何で感染拡大すんだよ」 「ふふ、でも笑顔だったら世界中に感染しても平和だよね」 そんなやり取りをする私たちを、菫ちゃんも微笑んで見てる。 「素敵な友人関係ね。羨ましいわ」 「もちろん、菫ちゃんも友達だよ!」 一歩引いたところにいた菫ちゃんに近寄って手を握る。と、その時だった。 「「「ヤバーイ!ヤバーイ!」」」 私と美空ちゃんと朝霞ちゃんのスマホが一斉に同じアラームを鳴らす。これは、悪の組織『ヤバーイ』の怪物が出た合図だ。 「ど、どうしたの?三人いっぺんにアラームが鳴るなんて」 菫ちゃん、びっくりしてる。どうにかしてこの場を抜け出して怪物退治に行かないと。えーとえーと。 「お、お花摘みの時間なの!」 「三人いっぺんに!?時間も指定で!?わ、私も一緒に行った方が良かったりする?」 えっ、ついて来られたら変身できない! 「や、やめた方がいいよ!長さも太さも臭いもラスボス級のだから!そういう訳で、ごめんね!」 「三人とも!?嘘でしょ!?そんな事ある!?」 驚いて固まっている菫ちゃんを置いて、私たち三人は教室を飛び出した。早速二人が文句を言ってくる。 「梨々花ちゃん、私恥ずかしいよぉ・・・」 「花畑ァ!もっとロジカルな言い訳ひねり出せや!JCにあるまじきセンスだぞ!」 「私も必死だったんだよー!」 屋上へ駆けあがり、私たちは強く床を蹴って跳んだ。 「「「チェンジ!マジカヨ!」」」 今日も町の平和を守るため、私たちは頑張ります!