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【学園祭】イースターカフェ
今日はコネサンス魔法学園の学園祭。三日間ある内の二日目だ。私たちのクラスはカフェをやってるんだけど、私の提案で地球の復活祭(イースター)の要素を入れて、女の子たちがイースターバニー役でバニーガール衣装でイースターエッグを配って宣伝してる。というのも、男子とヴァニラが結託してクラスの出し物を『乳暖簾おっパブ』にしようとしやがったので、残りの女子全員で猛抗議。大揉めしてたらミリシラ先生が出てきて男子をぶちのめした後に女子勢に代案出せって要求してきたので、他と絶対被らないイースター仕立てにしたってワケ。なにせ、普通のカフェはもう他のクラスが受け持ってたから、かなり毛色を変えないと通らなかったんだよね。 「♪」 「ヴァニラは楽しそうでいいな・・・」 ヴァニラは元々ウサギなので素でいいんだけど、私たち他の種族の女子はバニー衣装だから結構恥ずかしい。まあ、風俗喫茶よりはマシだけど。 「ヒマリー、そろそろホール当番じゃなーい?」 「あっ、そうだね。ありがとー、すぐ行くねー。ほらヴァニラ、教室戻るよ」 「♪」 女子は宣伝だけじゃなくてホールも担当。まあ要するに、お客さんの目に触れるところは全部女子だ。男子にバニーガールの格好なんてさせたら気色悪くて見てられないし、着ぐるみなんて作ってられないから男子は全員裏方。 「ヴァニラ、男のお客さん相手に色目使っちゃ駄目だからね?」 「?」 ヴァニラは喋れないから筆談で接客するんだけど、男のお客さんがいやらしい目をしてるのに気づくと、まるで挑発するかのようにわざとらしく乳暖簾の位置を調節したり、服をぱたぱたさせたりしている。バニートラップの本能なのかな。呪いが消えてからは見境なく男の人を誘ったりはしなくなってるみたいだけど、それでも普通の女の子より性欲が強いみたいだ。 「・・・本当に瑞葵の生まれ変わりとかじゃないんでしょうね?」 「?」 この反応だから、多分違うんだろうけど。ちょいちょい瑞葵の面影がヴァニラに重なる事があってうっかり呼び間違いそうになる時がある。気を付けないとね。 「ヒマリとヴァニラ、戻りましたー・・・って、すげえ混んでるね」 教室の内装を整えたカフェに戻ると、お客さんは大入り。思わず感想をこぼした私にクラスの女子たちは疲れ気味に応える。 「誰のせいだと思ってんの?ヒマリがこんな目新しい催しやるから皆珍しがって来てるんだけど?」 「この衣装のせいなのか、男子もやる気出してるから何気にメニューの評判もいいみたいだしさ、口コミでさらに人増えてるんだけど」 「あとシンプルに男のお客さん多くて、めっちゃ警戒してないと痴漢が出かねないんですけど」 「・・・皆ごめん、でも恥ずかしいのは私も一緒なのでどうかご勘弁を」 私とヴァニラはホール当番の子と交代して、カフェのホールに出る。注文を取るだけじゃなくて、回転率を上げるために迷惑客を早めに追い出す必要もあるんだよね。特に女の子のバニー姿を見たいだけで長時間居座ってる男客とか。こりゃ大変だ。 「・・・あれ?あの席の周りだけなんか空いてるな」 窓際に近い所の席に、一人だけ銀髪のお姉さんが座ってるんだけど、その周りは謎に人が少ない。ちょっと行ってみるか。 「なんか、あの人に注目しつつも近寄るのを躊躇ってる感じだな・・・」 白いシャツに黒いパンツ、サングラスで目元を隠した巨乳のお姉さんだ。背中からはコウモリの羽が・・・って、この人もしかして。 「あ、あの・・・ロザリー、さん・・・ですか?」 「あら、バレちゃった?」 この人、エターナルアイドルのトップチーム『vamℙrism(ヴァンプリズム)』のリーダー、ロザリーさんじゃん!バレちゃったって、いや周り皆気付いてるだろこれ!ただ大物過ぎて声が掛けられないだけで。 「明日の夜、後夜祭ライブに『vamℙrism』が出演するでしょう?一日早く来て、現場の空気を下見していたの」 「それはまた、真面目なんですね・・・」 最近マーメイド向けに水着をPRしたところ、なんかフロウプロダクションから感謝の連絡が来て、マーメイドのアイドルチームの名付けまでさせてもらったという事があった。その縁なのか、学園祭が近くなった時にフロウプロから連絡が来て「学園祭を盛り上げるためにアイドルを派遣したい」って言ってくれた。流石に『清廉(セイレーン)』は水辺じゃないと駄目だから来れなかったけど、まさかのトップチームを寄越すとは思ってなかったから学園全体が「vamℙrismが来る」ってニュースに激震したんだったな。 「お忍びで来てるから、他の人には内緒よ?」 ロザリーさんは伝票を持って席を立ち、会計に向かう。彼女の通った近くの空間には緊張が走り、皆がロザリーさんを目で追っている。そんな変装じゃ溢れ出る芸能人オーラが隠せるわけないんだから、絶対ここまで来る途中でもバレバレだったと思うんだけど。 「ヒマリ、ちょっと!ヴァニラちゃんがまた男の人誘ってる!」 「あー!?どこ!・・・こらヴァニラ、やめなさいっての!」 ロザリーさんを見た事なんて、一瞬で頭からすっぽ抜けた。まったく、油断も隙も無いなヴァニラは。 そんな風に慌ただしく三日間は過ぎ、後夜祭ではコネサンス魔法学園のアリーナでvamℙrismがミニライブを披露してくれた。一応一般のお客さんは帰った後の学園関係者限定のミニライブだったんだけど、すごい盛り上がり。 「ようこそ、闇の宴へ。今宵の獲物は貴方達♪」 コネサンス魔法学園も元々古城だった建物を改築して校舎にしてるから、割と普段のvamℙrismライブの雰囲気に近いのかも。ミニライブも大成功に終わり、今年の学園祭は幕を下ろした。 「来年はもうちょい出し物考えよう・・・またこんな忙しいのやだし」 「?」 ヴァニラは魔物だから体力的に平気そうだけど、私たち普通の女子はちょっとしんどい。