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【フラワーマーケット】乱闘騒ぎ

「ほらヴァニラ、はぐれないように気を付けて」 「♪」 王都の中央市場は、今日はイベントデー。ジャルダン自治区などから取り寄せられた色々な花を見たり購入したりできる『フラワーマーケット』です。ヴァニラは人参には目が無いけど、普通に花も好きみたいで嬉しそう。・・・突然花にかじりついたりしないかがちょっと心配だけど。 「ヴァニラ、次はあっちに行こうか。ほら、手繋ごう」 「♪」 私とヴァニラが手を繋いで歩いていると、突然凄い殺気が襲ってきた。 「ヒマリ、そいつから離れて!」 鋭い叫び声に驚いて振り向くと、キレーヌさんが怖いくらい真剣な顔つきでこっちを・・・いや、ヴァニラを睨んでいた。周りの人も何事かと足を止めて、キレーヌさんとヴァニラを交互に見ている。 「そいつはウサギ系獣人に化けてるみたいだけど、ボクの目は誤魔化せないよ!そいつはバニートラップ!人間を人参に変えて食べてしまう魔物だ!」 「「!」」 私とヴァニラは心臓が跳ねた。周りの人もヴァニラに注目するけど、ヴァニラの胸につけたブローチ(ウサギ系獣人である事を示す身分証だ)を見て困惑し、キレーヌさんの言い分が正しいのか迷っている様子。とはいえ、注目を集め続ければいずれ真実はバレる可能性が高い。まさかこんなに人目のあるところでヴァニラの素性やこれまでの経緯を話すわけにもいかないし、ここは逃げるしかない。 「ヴァニラ、逃げるよ!」 「!」 私はヴァニラの手を引いて大通りを外れた路地に飛び込む。 「待て!逃がさないぞ、切り捨ててやる!」 キレーヌさんが恐ろしい速さで追跡を開始した。体力の差から言って、普通に逃げ切るのは無理だろう。私は杖を取り出し、幻覚魔法を発動する。 「『迷宮壁(ラビリンスウォール)!』」 私たちの通ったばかりの路地に、周囲の風景によく似た壁が出来上がる。私は走りながら、次々と路地を曲がり同じように幻覚を発動させていく。キレーヌさんから見れば、この辺りの路地が行き止まりだらけの迷路になったように見えてるはずだ。 「ハァアッ!」 背後の方から、剣を振るって壁を切り裂くような音が聞こえてくる。行き止まりか幻かを判断するために剣を振り回しながら追いかけてきてるみたいだ。 「ヴァニラ、大通りの方に戻ろう!人ごみの中に隠れれば、キレーヌさんもすぐには見つけられないはず!」 「!」 頷いたヴァニラは、しっかり私の背後について走って来る。私は結構息が切れつつあるのに、ヴァニラは全然余裕そうだ。こういう時は魔法使いゆえの体力の低さを呪いたくなる。大通りに飛び出して、ヴァニラと一緒に人ごみの中を走る。しかし。 「どいたどいたー!」 頭上から声がして、直後私とヴァニラは轟音と共に吹っ飛ばされた。眩む視界の中、さっきまで走っていた場所を見ると、キレーヌさんが路面に剣を突き立てていた。路面は粉々に粉砕され、クレーターみたいになってる。まさか、上から飛び込んできたのか。 「甘かったねヒマリ。あんな幻覚、建物の上に出れば無意味だよ」 壁を切り裂いてる音だと思ったのは、剣を壁に突き立てて駆け上る音だったのか。まだ起き上がれない私に、キレーヌさんは剣を向けた。 「魔物をかばうような真似はしないで欲しいな。そいつは醜い化け物なんだ。殺さなきゃダメなんだよ。それをかばうって言うなら、ヒマリも切るだけだよ」 「くっ」 キレーヌさんがすっと剣を振りかぶった。周囲の人々が息をのむ。 「!」 ヴァニラは私を助けようと、私とキレーヌさんの間に飛び込もうとした。それがいけなかった。 「かかったね」 キレーヌさんの目は、しっかりとヴァニラをとらえていた。剣を握る右手に力が漲るのがはた目にも分かった。 「だめ!」 私は咄嗟に跳ね起きて、ヴァニラに抱き着く。ぎゅっと目を閉じ、せめてもの抵抗に防御魔法で身を守ろうとした。 「・・・?」 剣撃が、来ない。恐る恐る目を開けて後ろを見ると、キレーヌさんは苦し気にへたりこんでいた。 「大丈夫ですか、ヒマリさん、ヴァニラさん。危ない所でしたね」 優しい声がして、穏やかな光が差す。ラファエル様が、真剣な顔でそこに立っていた。手から放出された信力が、キレーヌさん目掛けて差し込んでいて、その敵意を抑えているみたいだ。 「ら、ラファエル・・・!邪魔しないで、そいつは魔物なんだ・・・!切らないと、大勢の人が被害に遭うんだよ・・・!」 「大勢の被害など出ませんよ。私はヴァニラさんがサイトさんと一夜を同じ部屋で過ごしたのを知っています。サイトさんには何事もありませんでした」 笑顔を浮かべて皆に言い聞かせるように語るラファエル様。その言葉を聞いて、周りの人たちの間にざわめきが走った。「じゃあバニートラップじゃないんじゃないか」「いやでも、聖職者が若い女と二人で寝るなんてしないだろ。接触が無かっただけじゃないか」「サイトさんは紳士だもの、指一本触れたりしないはずよ」「だがもし女がバニートラップなら襲ってくるだろ」などなど、口々に考えを言い始める。そしてついに、一人がラファエル様に質問をした。 「ラファエル様、ではその少女は神に誓ってバニートラップではないのですね?」 ラファエル様は言いよどむ。聖女は『真実を言わない』事や『冗談を言う』事はできても、『嘘をつく』ことはできないからだ。まして、神に誓ってともなると。私は声を張り上げる。 「身分証を見てもらえば明らかです!ヴァニラは魔物じゃありません!」 「その身分証が盗品じゃないって証拠はないんじゃないかな」 ラファエル様の力の影響で、攻撃はしてこないキレーヌさん。でも、疑いの視線をまだヴァニラに向けている。まずい。このままじゃ、ラファエル様が答えられない事で疑惑の声が膨れ上がる。 「皆の者、その疑問にはワシが答えようではないか!」 突然甲高い叫び声がして、人垣が割れた。堂々とした足取りで進み出てきたのはミリシラ先生。 「ヴァニラはバニートラップではない!何せコネサンス魔法学園の生徒じゃからな、ワシがしっかり身元を調べてあるわい!全知全能の名にかけて、魔物疑惑は真っ向から否定してやるぞ!」 その言葉を聞いて、皆の顔に安堵が広がった。大聖女と世界三大賢者の一人が認めているんだから間違いないだろうと、皆はマーケットに戻っていく。後にはへたりこんだキレーヌさんが残された。 「キレーヌ、お主はちょっとこっち来い。大通りを破壊しおって、落とし前をつけてもらうぞ」 「そんなー!」 ミリシラ先生がキレーヌさんをしょっぴいて行った。多分、こっそりとヴァニラの素性を説明してくれるつもりなんだろう。 「ヒマリさん、ヴァニラさん。お怪我を治しますね」 ラファエル様が私たちの擦り傷を回復してくれた。 「♪」 「ありがとうございます、ラファエル様。すみません、騒ぎを起こしてしまって」 「いいえ、いいのですよ。あれはミリシラ様がキレーヌさんに説明しておくべき事を忘れていたせいでもありますから、ヒマリさん達に責任はありません。さあ、お買い物に戻りましょうか」 ラファエル様はこちらに笑いかけると、またマーケットの雑踏に消えていった。 「・・・私たちも行こうか、ヴァニラ」 「♪」 また今日みたいな事が無いように、次は気を付けておかないと。

コメント (12)

Crabkanicancer
2025/04/18 18:27
うろんうろん -uron uron-
2025/04/17 14:15

早渚 凪

2025/04/17 15:08

水戸ねばる
2025/04/17 14:03

早渚 凪

2025/04/17 15:08

thi

脳筋なキレーヌさんに振り回されました

2025/04/17 14:00

早渚 凪

そもそもはミリシラ様のせい

2025/04/17 15:08

五月雨
2025/04/17 12:32

早渚 凪

2025/04/17 15:08

Jutaro009
2025/04/17 12:05

早渚 凪

えっちとは心外な。今日の話は別にそんな・・・いや服装がえっちだった。私が間違っていました。

2025/04/17 15:08

さかいきしお
2025/04/17 04:12

早渚 凪

2025/04/17 15:06

サントリナ
2025/04/17 03:05

早渚 凪

2025/04/17 15:06

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2024年7月よりAIイラスト生成を始めた初心者です。 全年齢~R15を中心に投稿します。現在はサイト内生成のみでイラスト生成を行っています。 ストーリー性重視派のため、キャプションが偏執的かと思いますがご容赦願います。

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