1 / 5
【ティーパーティ】早渚凪攻略作戦会議
「金剛院さん、本日はお招きいただきありがとうございます」 「ふふ、そんなに畏まらなくてもよろしくてよ。気軽にお茶を楽しんでいただければよいのですわ」 今日はお兄抜きで、金剛院さんの家に来ている。理由としてはお茶会だそうだけど。お兄が仕事でいないタイミングを指定して誘ってきた辺り、多分裏がある。 「これ、アッサムのファーストフラッシュですか?おいしいです」 「あら、よくご存じで。うちの契約農園で摘まれたものですわ」 サラッと契約農園とかいう単語出てきた。やっぱりこの人、上流階級なんだよね。お兄は仕事で会う事もあるみたいだけど、私はあんまり金剛院さんが活躍している所を見た事がないからあんまりイメージが湧かない。 「それで、ただ紅茶をご馳走するために誘った訳じゃないんですよね。何か相談事ですか?」 「・・・ええ。他ならぬお兄様の事ですわ。早渚凪さんについて」 やっぱりお兄絡みか。でも大体の事は金剛院さんはストレートにお兄に言うし、今回は直接言いづらい事なのかも。 「彼はわたくしに興味が無い訳では無さそうですが、金剛院グループというものに気おくれしているようで・・・どうしたら婚約まで漕ぎつけられるか、ご意見を伺いたいの」 おっと、そうきたか。中々諦め悪い人だな、金剛院さんも。ちょっと考えていると、桜一文字さんとコマメさんがお茶のおかわりやお茶菓子を準備してやって来た。 「お嬢様、まーだ早渚さんの事諦めてないんですよねぇ。この間なんか下着姿で密着して篭絡しようとしてましたもん」 「えっ!?」 「桜一文字!それはわざとではないとあれほど!」 ・・・帰ったらお兄問い詰めるか。誤魔化すようならお兄のアレを塩もみにしてやる。 「ピピー。取り合えず、お嬢様がパパとの婚約を成功させるための方策は大別して3つと判断します」 お、コマメさんが動いた。AIの提案するプランとやら、どんなものだろう。 「①として、お嬢様が金剛院グループを離れてパパに嫁入りする方法です。②として、パパに金剛院グループ入りを承諾させる方法です」 この二つの案に、人間三人はう~んと首をひねって反応する。難しいよね、どっちも。 「①の案は厳しいですわね・・・今から金剛院グループを受け継げる人材を育成するとなると、人材の選定と育成期間の問題が・・・」 終わる頃には金剛院さんも高齢女性になってそう。その間にお兄、別の女に取られちゃうでしょ。桜一文字さんなら短期間で金剛院グループの後継者になるだけの能力はありそうだけど、元メイドがグループの後継者ってなると世間体がなぁ。 「②案もきつくありません?早渚さん、これまで散々渋ってますからねぇ・・・早渚さんがそれを快諾するほどの交換条件なんて、そうそう簡単には」 「いっそ本当に桜一文字の身体を好きにしていいって条件出してしまおうかしら」 無言ですぱーんと金剛院さんの頭をはたきつける桜一文字さん。 「冗談ですわよ」 「それにお兄、どっちかと言うと貧乳派ですから。私くらいのサイズが好きみたいですよ」 金剛院さんも桜一文字さんも圧倒的だからな、お兄の好みからはちょっと外れてると思う。 「いやでも早渚さんって割とおっぱい星人じゃないですか?結構視線感じますけど」 「あぁ・・・まあ、お兄も男だから。私も一緒にお風呂入ってると『胸見られてるなー』って思う事ありますし」 「ちょっと玄葉さん!?一緒にお風呂ってどういう事ですの!?」 あ、言わない方が良かったかこれ。説明の中身を考えてたら、コマメさんが提案の続きを言い出してくれた。 「③として、結婚してもパパには金剛院グループに関わらせない方針です。この場合は、やや権利上の問題等が面倒になりますが」 「それはアリかも知れませんわ!玄葉さん、どうでしょう?」 「あー、結婚しても今と仕事や生活が大差ないなら割と希望あるんじゃないですか?」 ③が一番現実的な気はする。ただ・・・。 「お兄を惚れさせないと始まらないのはどの案でも共通してますけどね」 「ふっ、ならばやる事は一つ!早渚さんを落とすべく、女に磨きをかけるのみですわ!色仕掛けも効くみたいですし」 とりあえずの方針は出たみたいだ。 「お嬢様にそんな度胸ありますかね?裸で抱き寄せられて耳元で『ママにしてやろうか』って言われただけで気絶したくせに」 「は?」 ちょっと待て。今のは聞き捨てならないぞ。 「お兄、そんな事したんですか」 「ええ、私とコマメも見てる前でやってました」 「ピピー。パパはとんだスケコマシです」 「あ、あの時の早渚さんはとても男らしかったですわ・・・」 真っ赤になってしまう金剛院さん。・・・お兄、覚悟しておけよ。