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【悪魔】シークレットブロマイド
『vamℙrism』の人気が大きく飛躍した出来事はいくつかあるが、ファンの間で「シークレットブロマイド効果」と呼ばれ伝説になっているエピソードがある。 それはまだvamℙrismが数人しかいなかった最初期の頃の出来事で、初めての大型ライブの告知の時だった。 告知は当時王都で発行されていたアイドル雑誌(と言っても新聞の号外くらいの薄さ)で行われ、魔法技術によって紙面上で動く音声付き映像で初代社長とロザリーの二人が宣伝した(地球人に分かりやすく表現すると『PR動画』のようなもの)。 この大型ライブは、現在では当たり前になった『古城ライブ』の初披露であり、ちゃんとした物販コーナーを初めて開設するライブでもあった。 そのためどんなグッズを販売するかを周知するべく、ライブ告知の流れの中でグッズを披露していった。 そして、ランダムブロマイド第一弾の紹介の際、社長が「リーダーのロザリーにはシークレット版が存在します」と言って提示したのがこちら(画像1枚目)。 思いっきりオフショット感満載、しかもセクシーなYシャツ&黒下着姿でありファンの注目は一気に集まった。 「事務所の仮眠室で撮影した、寝起きでふにゃふにゃのロザリーです。しかもなんと音声付きで、名前を呼んであげると喋ります」 社長が得意そうにブロマイドに「ロザリー」と呼びかけると、ブロマイドからロザリーの音声が流れだした(画像2枚目)。 「ちょっ、ねぇえええ!?しゃちょー!!バカァ!!!」 このタイミングになってようやく何が起きてるのか把握したロザリーが顔を真っ赤にして絶叫した。この瞬間、「クールビューティ―」「ストイック」で通っていたロザリーのイメージはいい意味でぶち壊しになった。 羞恥にまみれた「バカァ!!!」とブロマイドのぽやぽやボイスはvamℙrismに興味の無かった大勢のアイドルファンをもギャップで虜にし、このアイドル雑誌は創刊史上瞬間最大の売り上げを記録した。 そして当然のように、ライブ当日の物販はランダムブロマイドが飛ぶように売れたのである。ライブ自体の成功も人気上昇効果があったが、告知の効果の方が凄かったのは間違いない。 ちなみに、ロザリーは何とかこのシークレット版を恥ずかしくない写真に差し替えようとしたようだが、話題性が強すぎたのと既にランダムブロマイドがシャッフル&パッケージングされてしまっていたため回収できなかったらしい。 現在このシークレット版ロザリーのブロマイドは伝説のファンアイテムと化しており、現物を目の当たりにする事はまずなく、入手も不可能に近い。 当時、まだファンの少なかったvamℙrism。ファンが少ないゆえにグッズの絶対数も少ない頃の、しかもランダムブロマイド第一弾のシークレット枠という事もあって、このブロマイドは恐ろしく希少であり、それこそ古城を買い取れるほどの額面を提示しても古参ファンは手放さないだろうと言われている。 フロウプロダクションの社長室には、告知に使用された最初の1枚が額に入れられ厳重に守りの魔法をかけられて保管されているのが確認されているが、これはフロウプロダクションが存在する限りこのままだろう。 当のロザリー本人は、初代社長が死没した現在になってもまだこの件を根に持っているらしい。新人アイドルが同じような目に遭わないよう目を赤く光らせているようだ。