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【お寿司】向日葵ちゃんの快気祝い
今日は瑞葵ちゃんのおうちに玄葉共々お邪魔しています。向日葵ちゃんが無事に目が覚めて、検査の結果も問題なくすぐに退院できたので、そのお祝いをしましょうと誘われたのでした。 「瑞葵ちゃん、もしかしてそれってお寿司?」 「はい、お寿司ですよ。私こう見えて料理上手なんですから」 こう見えて、というか普通に女子力は高そうだと思ってましたが、まさかお寿司まで握れるとは思いませんでした。お弁当を作るのとは訳が違うんですよね、ちゃんとしたお寿司握るのは。 「すごいね、私もお寿司握るのは中々しないんだよ。下準備とか食材の管理が大変だからね」 「今日は新鮮なお魚が買えましたからね。せっかくですから作ろうと思って」 瑞葵ちゃんの何の陰りもない笑顔、久しぶりに見た気がします。これも向日葵ちゃんが無事に目を覚ましてくれたおかげです。そう思いながら向日葵ちゃんの方を見ると、何やら苦戦中の様子。 「・・・向日葵ちゃん、それは海鮮丼?」 「ええまあ。私は瑞葵と違って料理そんな得意じゃないんで。これなら寿司握るより簡単ですし」 ちょっと機嫌悪そうだな。瑞葵ちゃんの料理の腕を褒めてしまったからかな。・・・基本的に二人とも器用だけど、向日葵ちゃんは被服系、瑞葵ちゃんは料理系が得意なのかもしれない。 「凪さん、もうちょっとですからテーブルについて待ってて下さいね」 「はーい」 瑞葵ちゃんがてきぱきと食事の準備を整えて、間も無くおいしそうなお寿司と海鮮丼がテーブルに並びました。皆で手を合わせて「いただきます」と「向日葵ちゃん退院おめでとう」をして、その味に舌鼓を打ちます。 「お、すごい。お店で食べるような味だね」 「食材が良いからですよ」 向日葵ちゃんもおいしそうに食べています。一週間近く寝ていた訳だから、舌が驚いちゃったりしないのかな。 「瑞葵、料理本当に上手よね。・・・早渚さんのところに嫁ぐ予定は決まったの?」 「「いや、付き合ってもないし」」 「向日葵ちゃん、おかしいと思うでしょ。お兄と瑞葵ちゃんのこの息の合いようで付き合ってないとか」 玄葉と向日葵ちゃんがうんうんと頷いています。そう言われても、恋人じゃないのは事実なんだからしょうがないでしょう。 「・・・んぐ!?」 突然、お寿司を食べていた瑞葵ちゃんの表情が固まりました。どうしたんだろう、喉につまったとかかな? 「瑞葵ちゃん、どうしたの?大丈夫?」 「・・・はっ、はぁ、はぁ。い、いえ・・・なんでしょう?今食べた一貫だけ、すごい別物だったというか、食べ物の感じがしなかったというか・・・」 「・・・あ、ご、ごめんなさい。もしかして私かも」 玄葉が何かに気付いたように言い出しました。 「さっき、お魚にアニサキスが付いてないかちょっとめくって見て見たの。もしかしてそれで・・・」 「えっ、玄葉の毒化スキルってそんなちょっとの接触でも発動するの!?」 「「毒化スキル!?」」 あ、この二人は知らないんだっけ。私は玄葉の料理の腕前について、二人に説明してあげました。 「ええー、玄葉さんってそんな能力の持ち主だったんですか?」 「だから相対的に早渚さんが料理上手になったんでしょうかね」 「・・・ごめんなさい」 玄葉は顔を赤くして縮こまってしまいました。大事に至らなかったんだから、そんなに気にしなくてもいいのに。 「玄葉さん、気にしなくていいですよ!たまたまお魚の質の悪い部位だったのかもしれませんし!」 「そうですよ、そんなちょっとの接触で有害物質になるなんて非科学的です。気を取り直して食べましょう」 二人ともいい子だな。この子たちがテロで引き裂かれるような事にならなくて本当に良かった。私は穏やかな気持ちで、この食事を楽しんだのでした。 食後、瑞葵ちゃんと玄葉が食器の片づけをしている最中、向日葵ちゃんが申し訳なさそうに私に頭を下げてきました。 「いや、早渚さんにも大変ご心配おかけしまして。すみませんでした」 「何言ってるの、悪いのはテロリンであって向日葵ちゃんじゃないよ。向日葵ちゃんに後遺症が無くて本当に良かったよ」 「はは・・・実は死にかけてたっぽいんですけどね。あの世みたいなところで来世の私に出会ったりしましたし」 「えっ、そんな不思議体験したんだ。それは興味深いね」 向日葵ちゃんが言うには、その来世の自分は豊満なバストの持ち主だったとか。一番印象深いのそこなんだ。 「なんか貧乳コンプレックスで黄泉返りしたみたいですごいみっともない気持ちになったりもしましたけどね」 「うーん、そもそも向日葵ちゃんって言うほど小さいかな?前瑞葵ちゃんからもらった向日葵ちゃんの写真見る限り、瑞葵ちゃんと同じくらいありそうだけど」 「早渚さん、デリカシー」 「ごめんなさい」 向日葵ちゃんいい子なんだから、いつか向日葵ちゃんの事を胸で判断せずちゃんと好きになってくれる男性が現れるとは思うけどな。