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【光】ラファエル様のゲリラ雑談「休日の散歩」
ハローヘイロー地球の皆様、義眼の聖女「ラファエル」です。先日はバニーラビットという魔物さんの解呪を三日三晩やっておりまして、なかなか大変でした。その代わりと言ってはなんですが今日はゆっくり休むようにと、僧侶の皆さんがお仕事を代わってくれましたよ。そこで今日はゆっくり、王都の周りにある草原でもお散歩しようかと思います。一応私は王都から離れるのは禁じられているのですが、王都に何かあっても対応が間に合うくらいの近所であれば出歩いても大丈夫なんです。では、早速出かけましょう。 (教会を出て城門をくぐり、草原へ移動する) ふぅ、風が気持ちいいですね。今日は冬にしては温かい気候ですので、王都内でもお散歩をしている人は多いかもしれません。・・・雨は降っていなさそうですから、今日は晴れているのでしょうか。こういう時、空模様や遠くの景観が見えないのは少し残念ではありますが、目が見えなければ見えないなりの感じ方、楽しみ方がありますので大丈夫ですよ。肌を撫でる風の感触、風に乗ってやってくる草木や花の香り、踏み出すたびにさくさくと鳴る草の音。自然と触れ合う事は、世界と触れ合う事。人と触れ合う事は、社会と触れ合う事。地球の皆様におしゃべりをしながら自然の中を歩くのはとても贅沢で幸せな行為だと思います。 (どこかから戦闘の音が聞こえてくる) あら?この硬いものがぶつかり合う音は・・・あっ、あそこを見て下さい。冒険者の方が大きなゴーレムと戦っているみたいです。形状からいって、古代文明のゴーレムでしょうか。心のある魔物さんであれば、私の能力で戦意喪失させる事が出来ますけれど、ああした心の無い対象は私に対しても攻撃を仕掛ける事ができるのでちょっと厄介ですね。とりあえず、ちょっと事情を聞いてみましょう。・・・あのー、すみませーん!冒険者さーん、どうしてゴーレムと戦闘しているんでしょうかー? 「えっ、人!?あ、あのね!急にこのゴーレムに襲われたの!ねぇあなた、すぐに王都から応援を呼んできて!こいつ硬すぎて攻撃が通じないの!このままじゃ殺されちゃう!」 まあ、それは大変ですね。でも応援はいりません、私が停止させますからね。 「は?いやあなた見たところ僧侶でしょ!?僧侶程度の攻撃がこんな大きいのに通じる訳ないじゃない!」 いえいえ、多分大丈夫ですよ。・・・『光の剣(クレイヴ・ソリッシュ)』。 (光が走り、一瞬でゴーレムが左右に両断され活動を停止した) 「・・・え?嘘・・・たった一撃でゴーレムが真っ二つになるなんて・・・」 この光の剣は、私の信力を可視状態まで凝縮させたものですね。信力で作ったものなので、重さはなく、私の認知できる範囲内で自由に動かせます。切れ味もないのですけれど、触れたものは何であろうと塵になってしまうので、魔力や闘気といったエネルギーで覆った武器や、信力を受け付けない装備などが無いと防御できないものになります。・・・あっ、すみません。ちょっと分かりにくいですよね。そうですねぇ・・・普通の方の感覚に合わせてご説明しますと、『視線を走らせた通りに何でも切れる』ようなものですね。視線が刃そのもの、みたいな。あ、でも力の消耗が激しいので、一度に六本までしか操れないのが弱点でしょうか。 「いやいやいやいやいや強すぎる!あなた一体何者なの!?」 これは失礼しました。申し遅れました、王都大聖堂所属の聖女・ラファエルと申します。 「ら、ラファエル・・・様?えっ、あなたがあの大聖女ラファエル様!?」 ええ。ほら、この目を見て下さい。作り物の目を入れている僧侶は他にはおりませんよ。・・・あ、でもすみません。ここで私がこのゴーレムを倒した事は秘密にしておいて下さい。聖女が力を行使したなんて知れてしまえば、不安に思う方や周辺諸国への説明責任が生まれる方もいらっしゃいますので。 「はい!誰にも言いません!助けてくれてありがとうございました!失礼します!」 ・・・ふぅ、良かったです。どうやらまだ王都からあまり離れられないランクの冒険者の方だったようですし、お散歩のおかげで一つの命が助かったのは幸運でした。でも力を使った事が教会にばれたら、僧侶の皆さんに『休んで下さいって言ったでしょう』と怒られてしまいますし、もう戻る事にしましょう。 (ゴーレムの残骸に背を向けて、教会に戻る) さて、今日の発信はこの辺りにしておきましょうか。地球の皆様も、私が力を使った事はナイショですよ?お口が軽い人は、そのお口を塞いじゃいますからね? それでは失礼いたします、さよなラファエル~。 あ、私とした事があの冒険者さんのお名前を聞くのを忘れていました。今後ご活躍なさってもそれと分からないかも・・・。失敗ですねぇ。