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【楽曲付き】死神少女が雨に歌えば
高台の公園を通っていると、雨が降り始めました。空を見る限り、大きな雨雲が通過しているだけなので、恐らくそう長引かないでしょう。 この公園には確か東屋があったな、と思い立ち、雨宿りのためにそちらに足を向けました。すると、雨音に交じって歌声が聞こえてきます。 「冷めきった夜の果て♪怯えた視線揺らして♪」 東屋にたどり着くと、そこではシリアちゃんがヘッドフォンをして歌っていました。目を閉じて歌う事に集中しているようなので、話しかけたら邪魔になるかなと思い、そっと足音を立てないように屋根の下に入ると、シリアちゃんがぱっと目を開けてこちらに気付いて笑いかけてきました。人の気配に敏感な子だなぁ。 「こんにちは、カメラマンさん。あなたも雨宿りなの?」 「うん、すぐに止みそうだからね。シリアちゃんごめんね、気持ちよく歌ってたのに邪魔しちゃって」 「いいえ、別にいいわよ。なんならカメラマンさんも聞く?」 シリアちゃんはつけていたヘッドフォンを私に手渡します。つけてみると、ほのかにシリアちゃんの体温が耳当てに残っていて、少しどきどきします。 「再生するわね」 シリアちゃんがスマホをいじると、曲が始まりました。私は音楽に詳しい訳ではないので、ジャンルはよく分からないのですが、これは・・・。 「もしかして、この音源で歌ってるのってシリアちゃん?」 「・・・ええ、そうよ。ほら、10月の終わり頃に、夜道をバックに写真を撮ってもらったでしょう。あれをCDジャケット風に加工したんだけど、それが大学のバンドやってるサークルに見つかって、曲作られたのよ。で、歌わされた訳」 ああ、あの写真かぁ。夜の風景とレザージャケットの良く似合うシリアちゃんがカッコよく撮れた奴ですね。 「これ、先輩には聞かせてあげたの?」 「まだ。今度そのサークルがライブハウス出るから、その時にゲストで歌えって言われてて、そこに先輩も呼ぶの。そこでちゃんとしたのを聞かせてあげるつもりだから、今はそのために練習してるわけ」 「成程ね。頑張ってね、シリアちゃん」 シリアちゃんにヘッドフォンを返して、雨が止むまでシリアちゃんの練習風景を眺める事にしました。音楽は聞こえないけど、シリアちゃんの歌が聞こえるのでそんなに退屈しません。しかし、何回もこの歌をリピートして聞いている内に、ふと『この歌の視点主は誰なんだろう』と思いました。シリアちゃんがわざわざ歌うからにはシリアちゃんが視点主だろうと思っていたのですが、何だか歌詞を良く聞いていると、むしろ『死神』の方がシリアちゃんのイメージで浮かんできてしまうのです。 怯えて逃げる女性を、大鎌を引きずりながらマントをなびかせたシリアちゃんが、酷薄な笑みを貼り付けて追いかけていく。そして最後には・・・。 そんなイメージが頭から離れなくなってきました。 「ね、ねえシリアちゃん。この歌の視点主と死神ってさ、誰かモデルがいるの?」 「そうね・・・ご想像にお任せしようかしら」 それ一番怖い回答じゃん。はっきり言って欲しい。気付くと、雨足はだいぶ弱まっていました。もう普通に帰っても大丈夫そうです。 「シリアちゃん、雨も弱くなったし、私はもう行くね。シリアちゃんも体を冷やさないように気を付けてね」 「ええ、ありがとう。それじゃあね」 別れの挨拶をした私が、ベンチから腰を上げて東屋を出て行こうとすると、シリアちゃんがまた声を掛けてきました。 「ところでカメラマンさん?分かってると思うけど、この歌の事を先輩に漏らしたら・・・ねっ♡」 怖い。『ありがとう』って言った時と笑顔が全く同じなのに圧が違う。その『ねっ♡』に物騒なニュアンスが含まれてる気がすごくする。 「わ、分かってるって。それに私は先輩の事は遠目に見た事があるくらいで、直接会話した事なんてないからさ、大丈夫だよ」 「それならいいの。私もカメラマンさんがこの歌のような怖い目にあうのは本意じゃないもの」 恐ろしい事を言わないで欲しい。死神姿のシリアちゃんに夜の路地裏で追いかけられる夢を見たらどうしてくれるんだ。 ※作中に出てきた曲『REAPER』は10月26日のお題「ジャケット」で投稿した『CDジャケット&レザージャケット』で出ていた曲リストの中のひとつです。 白雀(White sparrow)さんのコメントに対して「楽曲まで作る腕前は持ち合わせていない」と返信させていただいたのですが、『Suno AI』を知り、作ってみようと思いました。 『Suno AI』で作成した楽曲をそちらのサイトで公開しています。 https://suno.com/song/67f36665-f0f0-4afa-af78-518b3cb6d9f4 音楽知識ゼロに加えて、無料ユーザーで作れるガチャ回数でやったものなので大したクオリティじゃないです。楽曲生成は一日でやりましたが、何が一番時間かかるって言ったら『歌詞を考える事』ですね。 作りたい曲の構成と同じ構成を持つ既存の曲の歌詞をコピペしてきて、その全フレーズを同じ音符数になるように書き換える、いわゆる替え歌形式で作詞しました。三日かかりました。 もちろん楽曲はSuno AIが作ってくれるので構成をもらってきた曲の面影は全くありませんが、なんとか聞ける程度の出来にはなってるんじゃないかと。 最近はAIピクターズ内でもSuno AIとリンクした作品を結構見かけている気がします。頻繁に曲とリンクさせてる方々はすごいや。私には真似できないです。