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自分の靴って意外と覚えてない
紅葉散る自然公園で、幽魅が靴も履かずに佇んでいるのを見つけて声を掛けました。私としてはなぜ靴を脱いでいるのか聞いたつもりでしたが、 「ああ、そういえば凪くんと会ってから一度も靴って履いてないかも!」 などと言い出しました。幽霊だから気付いてなかったのかも・・・。 「よーし、見ててね。今作るから」 幽魅は紅葉の上に座り込むと、私に向かって足を上げました。 「ほーら、むにむにむに~」 幽魅がむにむに言うのに合わせて、彼女の足がぐにょぐにょに変形して靴らしきものを形作っていきます。いやあ、しかし確かにむにむにしてそうな肉付きの良い太ももです・・・。白パンツも眩しいですね・・・。いや、じゃなくて!何を私はガン見してるんだ! 「幽魅、幽魅。ちょっと、いったんストップ」 「はにゃ?」 視線を逸らしながら制止をかけた私を、幽魅は不思議そうに見つめてきます。 「その、ね。見えてるから。今日は短いでしょ、スカートが。だから、ね」 「・・・・・・・・・ば、ばかー!何で早く言ってくれないのー!?足上げた時に教えてよぉー!」 顔を真っ赤にして生成途中の靴を飛ばしてきました。未完成のスニーカーはリモコン下駄よろしく私の頭に直撃。意外と痛いです。攻撃の意志があればダメージ出せるんですね、幽魅の体って。 「むにむにむに・・・あれぇ?こんなだったっけなぁ・・・」 あれから、幽魅は長いスカートに衣服を作り替え、また靴作りをしています。しかし、なかなか思った通りのものが出来ない様子。 「あはは、意外と自分の靴ってデザインとか覚えてないねぇ」 「幽魅の場合、ただでさえ記憶喪失だからね。あと、足首の角度やばいよ」 悪戦苦闘している幽魅に別れを告げて、私は本来の用事をこなすために公園を後にしました。帰りに公園を通った時には、幽魅はまた短いスカートになっていて紅葉の上でごろごろしていました。 「なんか、どんなコーデがいつものだったのか分かんなくなっちゃった」 「だからって今度は靴が雑過ぎるでしょ。見た事無いよそんな靴」 「えー、もう靴はいいよぉー。どうせ足汚れないんだからさー」 だらっだらにだらけて紅葉の絨毯を転げまわる幽魅に、私はため息を一つつきました。