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【ナイショ】幽魅の魔法少女ごっこ

玄葉と二人、PCパーツの買い物のために町を歩いていた時の事です。すぐ前方の角を曲がった先の大通りから、子供たちの歓声が聞こえました。 「はい、もう放しちゃ駄目だよ?あと、お姉ちゃんの事は皆にはナイショね?」 あれ、この声は幽魅?おかしいな、幽魅は私と玄葉にしか認識できないはず。私たちは顔を見合わせて、そっと角から大通りの方を覗き込みました。そこにいたのは、何やらフリフリした衣装に身を包み、三人の子供たちの前にしゃがみこんで『しー』のポーズをしている幽魅です。子供たちは幽魅の方を見ておらず、真ん中の女の子が手に持った風船を見て何やら興奮している様子。どういう状況なんだ? 「なーんちゃって。この子たちも私の事見えてないんだよねー。いやでも、こんな格好知り合いに見られたら自殺モンだよねー。もう死んでるけどさ、あはは!」 独り言を言いながら、幽魅がくるっとターンして自分の服装を見下ろし、その拍子に角から覗き込む私たちと目が合いました。 「「「あ」」」 見る間に幽魅の顔が赤く染まっていきます。これは逃げるつもりだな。捕まえて話を聞いてみよう。 「玄葉」 「よしきた」 私が声を掛けると、玄葉は素早く鞄からお札を取り出して幽魅目掛けて飛ばしました。逃げようとした幽魅の背中に見事に貼り付き、幽魅はその場でしびれたように動けなくなります。さて、幽魅の方は玄葉に任せて、私は子供たちに話を聞いてみよう。 「ねえ、君たちちょっといいかな?さっき、何だかはしゃいでいたみたいだけど、何があったんだい?」 「あのね、あのね!私が手を離しちゃった風船がね、ひとりでに戻ってきたの!」 「な!すごかったよな!」 「風も吹いてなかったのにな!」 真ん中の女の子も、両サイドの男の子たちもそれで興奮していたのか。多分幽魅が飛んで行った風船をキャッチしてくれたんだろう。その幽魅はというと、玄葉によって脇道に引きずり込まれて詰められていました。私は子供たちに「教えてくれてありがとう」と告げて、玄葉の方に合流します。 「いや、これはね玄葉ちゃん。別に悪戯してたとかじゃないんだよ。ただ空から困ってる人を見つけてこっそり助けたりしている内に、なんか私魔法少女みたいじゃないって思って、ちょっとその気になって衣装を作ってしまっただけなんだよ」 なるほど、無邪気な幽魅らしいや。そしてノリノリで人助けしているところを私たちが目撃してしまったと。聞こえないと分かっていて子供たちに話しかけるなんて、相当はまってたな、これは。そんな幽魅に対して、玄葉が冷ややかな視線を送りつつ一言。 「魔法少女ぉ?歳考えたら?」 「あ゛ーーーーー!!!」 無慈悲にも程がある。確かに享年29歳だから、既に魔法“少女”は無理がある年齢だよなと思ったけど、あえて私は口にしなかったのに。歳の事を言われた幽魅はまるで胸を包丁で突き刺されたみたいな絶叫をあげます。 「ひどいよ玄葉ちゃぁん!私だってさぁ、確かに20代で魔法少女はきついかなってちょっと思ったけどさぁ!そんなにはっきりぶっ刺さなくてもいいじゃん!」 「そうだよ玄葉、幽魅は人助けしてたんだから。えらいえらいって褒めてあげなきゃ」 「うわーん、凪くん優しいー!好きー!」 幽魅の頭を撫でてあげていると、今度は玄葉の冷ややかな目は私に向きました。 「ったくお兄は、女と見たらすーぐ甘い顔するんだから。安心感のある声で甘やかすのホント良くないと思う。クセになるから」 「・・・その言い方だと、玄葉ちゃんもクセになってるんだ。凪くんに甘やかしてもらうの」 その幽魅の言葉を聞いて、玄葉は鞄から無言で塩の瓶を取り出します。幽魅はそれを手で牽制しながらじりじり下がっていくのでした。その時です。 「強盗だー!」 大通りの方から、そんな叫びが聞こえました。慌てて行ってみると、二人組の男が宝石店から飛び出し、車に乗り込んでいるところでした。 「お、お兄!通報しないと!」 「待って、車のナンバー撮影した方が」 私たちがそんな風になってる中、幽魅が素早く飛び出しました。 「ここは私に任せて!そ~れ~!」 幽魅が手を伸ばして、霊力?を込めたようです。すると、急発進しようとした犯人の車がぴたりと止まりました。いや、よく見るとタイヤは猛回転しているのに、全く車体が進んでいません。まるで、ナニカに掴まれているかのように。そして、私は気付きました。何やら頭上から、ぶつ、ぶつん、と音がしているのです。見上げると、ビルの上にあったクレーンが吊り下げている鉄骨の束が、丁度犯人の車の真上に。そして、その鉄骨を束ねているワイヤーが切れていっています。音の正体はあれか。 「マジカル成敗!」 幽魅が叫ぶと、ワイヤーが弾け飛ぶように千切れました。そして、犯人の車目掛けて降り注ぐ鉄骨の束。凄まじい轟音が辺りに響き、私と玄葉は思わず耳を塞いで縮こまりました。少ししてから、恐る恐る目を開けて見て見ると、鉄骨はほとんどが犯人の車の周りに落ち、一本だけが犯人の車のボンネットを貫いてそそり立っていました。 「さすがに殺すのはやり過ぎだからね。死ぬほど怖い思いをしてもらうだけにしておいたよ♪」 やがて警察が到着し、犯人たちは逮捕されました。しかしこれ、マジカルっていうより悪霊の呪いなんだけど・・・。幽魅は鼻を高くして私に向き直ります。 「どうかな凪くん、魔法少女マジアホロウの活躍は」 「マジアホロウ?」 変身後の名前まで考えてたのか。どれだけ魔法少女ごっこにはまってたんだ。しかし、そこにまた玄葉が冷ややかな一言。 「いや、鉄骨落とすとかやり過ぎ。建設会社の迷惑考えなさいよ。マジアホロウからマジアホに改名したら?」 「マジアホ!?ただの悪口じゃんそれ!」 激しくショックを受けている幽魅に対して、私は「人助けは素晴らしいけど、一歩間違えば大事故になるような力の使い方はしちゃダメ」と言い含めておきました。

コメント (14)

M.T.
2025年02月05日 13時20分

早渚 凪

2025年02月05日 14時43分

うろんうろん -uron uron-

マジアホはヒドいニャ~(TOT)

2025年02月05日 11時39分

早渚 凪

今日も玄葉の言葉のナイフの切れ味は抜群ですw

2025年02月05日 14時43分

五月雨
2025年02月05日 09時23分

早渚 凪

2025年02月05日 14時42分

T.J.
2025年02月05日 08時52分

早渚 凪

2025年02月05日 14時42分

y1 紅
2025年02月05日 08時08分

早渚 凪

2025年02月05日 14時42分

柚子ゆず
2025年02月05日 03時04分

早渚 凪

2025年02月05日 14時42分

サントリナ
2025年02月05日 03時00分
サントリナ
2025年02月05日 03時00分

早渚 凪

2025年02月05日 14時41分

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2024年7月よりAIイラスト生成を始めた初心者です。 全年齢~R15を中心に投稿します。現在はサイト内生成のみでイラスト生成を行っています。 ストーリー性重視派のため、キャプションが偏執的かと思いますがご容赦願います。

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