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シリアと卜部の宅飲み
夕食を終えた卜部頼道の自宅に、缶ビールを携えたシリア・リーパーが現れてから早数時間。既に二人の脳にはアルコールが回り、室内には独特の臭気さえ漂っていた。 「うらべせんぱ~い、レポート大丈夫なんですかぁ?」 「もう今日は無理だろ・・・こんな飲んでて正常なもん書けるわけあるか」 机の上に広げられたままのレポートはほとんど手付かずであり、後日の卜部にその負担が重く圧し掛かる事は明白であった。 「お酒は吐くし、レポートは白紙。って訳ですね?おもしろ~い」 「まだ吐いてねえだろ。完全に酔ってやがるなお前」 そういう卜部の意識も時々空虚になっており、限界が近いのはお互い様である。 「そうです~酔ってます~後輩の女の子を家に連れ込んでお酒で酔わせるなんて、先輩のえっち~」 「記憶を都合のいいように改ざんしてんじゃねえぞ・・・呼んでもないのに突然来て家に上がり込んできたのもお前、酒持ってきたのもお前じゃねえか・・・」 「でも~・・・レポート書くの後回しにしてまで一緒に飲んでくれるって事は、そういう期待もあったんじゃないですか~?」 言いながら席を立ち、シリアは着ていたジャージのファスナーを下ろしてはだけて見せた。そこにインナーシャツは存在せず、赤いジャージとの対比も鮮やかな水色の下着が卜部の目に晒される。 「何してんだ・・・服着ろ・・・」 「そんな事言っちゃって、ブラ見えた瞬間ガン見だったじゃないですか~?我慢してないで、シましょうよ~」 椅子に座る卜部の肩を両手で掴み、ゆらゆらと揺らすシリア。アルコールに浸食された卜部にとってそれはもはや暴力に等しかった。 「恋人でもない女となんかやらねえよってあ゛あ゛~揺らすんじゃねえ・・・!」 「へへへ~揺れますよね~私の胸すっごい柔らかいんで~」 「胸の揺れじゃねえよ・・・第一まだブラ外してねえのにそんな揺れるかよ」 「せんぱ~い、ブラ取ってもいいんですよ~?ほらほら~」 誘うように体を揺らすシリアの誘惑。卜部はその甘美な声に抗うように、ぐっと視線を落とした。 「やらねえって言ってんだろーが。服着ろ」 「む~。ここまで誘ってるのに~。あ、分かった」 シリアは悪戯っぽい笑みを浮かべ、卜部を見下ろして言い放った。 「先輩、責任取るのが怖いんだぁ?意気地なし~」 酒の回った頭。二人きりの自室。自分を慕う後輩からの挑発。そういったものたちが、卜部に火をつけた。 「おい」 卜部はシリアの手を乱暴に掴んで立ち上がり、紫に輝く瞳を覗き込んだ。 「お前な、男にそういう事言うとどうなるか分かってんのか・・・安い挑発してきやがって。ベッド行くぞオラ」 「えっ?えっ?」 ぐいっと腕を引っ張られて、シリアは理解が追いつくより早く寝室に連れ込まれていた。なかば投げ出すようにベッドに押し出され、仰向けに転がされる。気付いた時には、卜部に組み敷かれていた。 「あっ」 「お前が誘ったんだからな・・・泣いてもやめねえから覚悟しとけよ・・・!」 その言葉を皮切りに、卜部はシリアの双丘に顔をうずめる。シリア自身が宣言していたように、その二つの膨らみは卜部の両頬を溶けるような柔らかさで包み込んだ。 「んんっ・・・!せ、先輩・・・」 これから訪れるであろうさらなる刺激に思いを馳せつつ、シリアは体を緊張させて卜部の次の動きを待った。しかし。 「・・・?」 何も起きない。シリアが怪訝に思い自身の胸を見ると、そこにあったのは卜部の寝顔であった。 「え・・・寝落ち・・・?」 ベッドという環境や柔らかな胸の弾力が、卜部の安心感のトリガーを引いてしまったのだろうか。酒の力も相まって、もう卜部の意識は夜の帳に溶けていた。 「・・・は、はぁ~~~~~!?ここまで来て寝落ちしますかぁ!?嘘でしょ、この状況で性欲より睡眠欲が勝る事あるわけ!?」 驚き、落胆、はたまた失望か。シリアの受けたショックは大きく、酔いを醒ますには充分であった。体をよじると、簡単に卜部の拘束から逃れる事もできてしまった。 「ここまで酔わせれば襲ってくれると思ってたのに・・・酔わせ過ぎたかしら。・・・仕方ないわね」 シリアはジャージを脱ぎ捨て、ブラとパンティだけの姿になって卜部の横に身を横たえる。卜部の険の取れた寝顔を間近に見て、酒臭い寝息を浴びながら一人呟いた。 「明日起きたら『昨日は先輩の男らしい一面が見られました』って言ってやろ。リアクションが見ものだわ」 そしてシリアもまた、眠りの世界へと旅立った。翌朝、目を覚ました卜部は下着姿のシリアとの同衾に驚き、しおらしく赤面したシリアの発言にうろたえたものの、万一を考えて自らの寝室にセットしていた監視カメラ映像を確認して何事も無かった事を確信。シリアの脳天にチョップを叩きこんだのであった。