【静寂】やらかしました
まだ夕方と言うには少し早い時間の出来事でした。今日は冬の海で海鳥の撮影の仕事でした。思ったより順調に撮影が進んだため、早めに帰れる事になった私は帰るなり浴室に向かったのです。潮風に当たっていたため、それなりに汚れてしまっていた体を洗い流そうと思ったのでした。 「あ」 「え?」 脱衣所の扉を開けた途端、世界の時間が止まったように感じましたね。そこで見たのはパンティしか身に着けていない玄葉の後ろ姿でした。反射的になのか、胸の前で腕を交差させて隠すような仕草になっていましたが、表情は『何が起きてるのか理解できてない』って顔でしたね。 しばらく、静寂の時間が続きました。数秒だったのかもしれませんし、数分経ったのかも分かりません。ただ、だんだん状況を理解してきた玄葉の顔が真っ赤に染まっていったのをよく覚えています。 「・・・お兄、動かないでね」 「うん」 玄葉がそっと呟いたので、私も穏やかに返事をして待ちます。 すごい勢いのビンタが私の左頬を打ちました。 「・・・ごめんね玄葉。今日は私、帰らないようにするから」 「・・・ん」 脱衣所を出て、ゆっくりと扉を閉めます。それから部屋に戻ると仕事道具を片付けて、玄葉がお風呂に入っている間に着替えをして家を後にしました。 「やってしまったなぁ・・・」 今日は玄葉も冷静になれないと思うので、明日まで帰れなくなりました。さて、今夜をどう凌ごうか・・・。