【夜空】女湯でばったり

ある夜、桜一文字さんから電話がかかってきました。何だろう、また何かあったのかな。 「早渚さん、今お時間ありましたか～？」 「ええ、大丈夫です。何かあったんですか？」 「はい。実は、私とお嬢様は本日東北の方にいましてね～。明日の朝からこっちで金剛院グループ系列会社のセレモニーがあって、それに出席するために前乗りしてたんですけど、ホテルの温泉でサイバ君に再会したんですよ～」 おお、そう言えばサイバ君は東北地方に住んでましたね。でもホテルの温泉で会うって、なかなかすごい偶然かもしれない。 「私たちが泊まってるホテル、レストランや温泉は宿泊客以外にも利用できるところなんですけどね。なんかサイバ君の家のお風呂が壊れちゃったみたいで、今日はたまたま温泉に入りに来てたんだそうですよ～」 「すごい確率ですよね。日付と時間が被らないと会えなかったはずですしね」 「本当にそうですよ～。それにサイバ君がもうちょっと大人だったら、男湯の方に行ってたはずですもん」 ・・・あっ、そ、そうか。よく考えたら温泉で出会ったって事は、女湯の中でばったり遭遇したって事じゃないか。 「サイバ君、お母さんと一緒に女湯に入ってたんですけど、恥ずかしがって露天風呂の方に逃げちゃってたみたいなんですよね～。そこに後から私が出て行ったから、もう大慌てでしたよ。顔真っ赤にしてあわあわして、なんかお風呂の中で正座しちゃったりしてて可愛かったです～」 「ああ・・・まあ、初恋のお姉さんがいきなり目の前に現れたわけですからね。しかも、その・・・は、裸だったんですよね？」 「早渚さん、デリカシー。・・・まあ、はい。別に混浴温泉とかじゃないんで、お互い全裸ですよ」 サイバ君、役得なんだかかわいそうなんだか・・・。もうあの子、桜一文字さんの裸を一生忘れられないだろうな。 「そうだ。サイバ君って、怪我は完治してましたか？ほら、宿城の奴がひどく蹴飛ばしたりしたでしょう」 「あ～、それは大丈夫でしたね～。ほら、私もサイバ君に会えてテンション上がっちゃったんで～。逃げるサイバ君を追いかけて押し倒して、全身くまなく洗ってあげましたからね～。その時見た限りじゃ、もうすっかり治ってましたよ～」 うわあ、もうだめだ。サイバ君、そんな事されたんじゃもうお婿に行けないじゃん。 「桜一文字さん、それはちょっとひどいんじゃないですか。サイバ君の気持ちを知っていてそんな事をするだなんて」 「早渚さん、何言ってるんですか。サイバ君はまだ7歳の子供なんですよ。女性に興奮するような年頃じゃないし、私だっていやらしい気持ちで押し倒したわけじゃありません」 分かってないな、少年の日のえっちな思い出がどれだけ男の性癖に影響与えると思ってるんだ。好きな女の子の裸は、母親の裸とは訳が違うんだぞ。 「はぁ・・・桜一文字さん、男心が分かってませんね。まさかサイバ君と連絡先交換とかしてないでしょうね」 「えっ、しちゃまずかったですか？気軽に会えない距離だけど、せめてメッセージ送り合うくらいいいかなって思って教えちゃいましたけど」 はい確定。サイバ君、もう他の女の子好きになれないわ。あの子が桜一文字さんに魅力を感じなくなるまでに何年かかるだろう。そしてその間に何回、女の子との出会いを失うんだろう。あまりにもかわいそうだ。 「桜一文字さん、サイバ君今頃どきどきして眠れなくなっちゃってると思いますよ。初恋の人に連絡先教えてもらった嬉しさと全身ごしごしされた恥ずかしさが混じってパンク寸前だと思います。もっと『他人から恋愛的な好意を向けられる』って事の重大さを認識した方がいいですよ」 「それ早渚さんにだけは言われたくないんですが！？」 ん？私にだけは言われたくないとはどういう事だろう。私なんて、誰からも恋愛的な好意を向けられてないのに。おかしな事を言う人だ。 ※イラストの方は水着着用となっていますが、これは仕様です。作中では全裸だったとしていますが、イラストでそれ忠実に再現すると規約に引っかかるレベルのR-18になるので、申し訳ありませんが各自脳内で水着を剥いでください。