鈴白姉妹の温泉トーク

「ねえ瑞葵。うちのお風呂が壊れたからって、何でこんな山の温泉宿まで入浴しにこなきゃならないの。お父さんは瑞葵に甘いから車出してくれたし、いいけどさ」 「えへへ、実はね、おねーちゃん。ここ、前に凪さんと二人でお泊り旅行に来た旅館なんだ。どうせなら銭湯とかより泉質の良いお風呂がいいかなぁって思って」 「待って待って待って。何？早渚さんと二人で来たって何？あんたたちいつの間にそんな深い関係になったの？ていうか瑞葵が外泊なんて最近あったっけ？」 「えっとね、あれはお盆前くらいかなぁ。凪さんと山道歩いて旅館について、水着に着替えて川遊びもしたし、旅館でおいしいご飯とお団子食べて、一緒の部屋で寝て、朝起きたら部屋付きの露天風呂の方で一緒にお風呂入ったりしたよ？」 「おい！お姉ちゃん聞いてない！お盆前ってそれ確か『友達の家に泊まる』って言ってた時じゃん！」 「だっておねーちゃん、あの時彼氏と別れたばっかりでイライラしてたじゃん。そんな時に『最近知り合った年上の男の人と一泊二日の温泉旅行に行ってくるね』なんて言われたらおねーちゃんどう思う？」 「あてつけかよってブチ切れるね」 「だから『友達の家に泊まる』って言ったんじゃん。私の気遣いです」 「お気遣いどうも。・・・じゃねえよ！一緒の部屋で寝て一緒にお風呂入るのは距離感おかしいでしょうが！」 「えー、ちゃんと下着はつけたまま寝たし、お風呂だって水着とか湯浴み着とか着てたからセーフでしょ？」 「ゴリッゴリにアウトだよ！恋人でもない男女がする振る舞いじゃないよね！？」 「だって凪さんから見たら私なんかまだまだ子供だもん。ぐいぐい行かないと、もっとお似合いの女の人に盗られちゃうし」 「ああー、瑞葵の人付き合いの仕方が悪い方に出たぁ。私が広く浅く人と関わるのに対して瑞葵って狭く深くなんだよねぇ」 「ほら、そんな事よりおねーちゃん。早く温泉入ろうよ」 「こら瑞葵。他に誰もいないからってタオルくらい巻きなさいよ、はしたない」 「男湯の方に凪さんいたりしないかなー」 「いたらお父さんと鉢合わせになってるわよ。もし会話の流れで瑞葵の知り合いだってバレてみなさい。早渚さんがサスペンス劇場の被害者みたいに男湯で血に染まったお湯に浮かぶ羽目になるわよ」 「あはは、大丈夫だよ。凪さん、今日は温泉気分じゃないはずだし」 「え、それどういう事？」 「なんかね、数日前から悩み事があるっぽい顔してて、凪さん好みの女の人が近くを歩いていてもカメラさえ向けないの。今日も朝から思いつめた顔して自然公園の方に向かっていったんだよ。多分、スランプ気味なんじゃないかなぁって」 「んー、まあ、早渚さんもプロのカメラマンとはいえ人間だからね。上手くいかない事もあるよね」 「窓から侵入してきた虎のせいでリビングが滅茶苦茶になったのがショックだったって訳じゃないと思うんだよね。その時は虎には怯えてたけど、虎が捕獲された後は平然とリビング片づけてたし」 「・・・あのさ、瑞葵？さっきからちょいちょい気になってるんだけど、なんで早渚さんの様子とか身の回りの事とかそんな詳しいの。虎ってあれでしょ、脱走した奴。その虎が早渚さんの家に侵入した話とか私初めて知ったんだけど」 「・・・えへ」 「可愛く笑ってごまかすな。あんたストーカーになってたりしないよね？」 「しないしない。もしそうなら凪さんが警察に通報してるよ。そしたら私、凪さんに接近禁止になってるって」 「いまいち信用ならねぇ・・・」 「ねー、おねーちゃん。髪洗ってくれるー？」 「露骨に話を逸らすな。あと甘ったれるな、髪くらい自分で洗え」 「おねーちゃんのけちー。妖怪パッド3枚女ー」 「ああ！？胸のサイズお前と変わんねえだろうが！自分はパッド入れなくても余裕ですみたいに言うんじゃねえ！」 「きゃー！おねーちゃんだめぇ！凪さんにも揉まれた事無いのにー！」 「あってたまるかよぉ！そんな事あったらお父さんに言いつけてるわ！」 「あ、そ、そうだ！おねーちゃん、実は最近弥美ちゃんからバストアップに効く体操があるって教えてもらったんだよね！やめてくれたら教えてあげちゃおうかな！」 「・・・やだもー、瑞葵ってばそれを早く言いなさいよー。お姉ちゃん想いの妹をもって私は幸せだなぁ」 「（よしごまかせた。弥美ちゃんがそんな体操してるわけないのに。あの子食べただけおっぱい大きくなるんだから）」 「瑞葵、髪洗ってあげるね？最近お気に入りのカモミールの香りのシャンプー持ってきた？」 「うん。ありがと、おねーちゃん」