異世界組のクリスマス

●SIDE：ヒマリ　12/25　00：21　ミリシラの自宅前 さてさて、今頃ミリシラ先生は夢の中のはず。昼間の話を真に受けてたらきっと早く寝てるだろうし。この新しい服をそっと枕元に置いてあげれば私のやりたい事は完了だね。・・・あれ、ミリシラ先生の家の前、何か濡れてる？それに誰か立って・・・あれ、もしかしてラファエル様？ 「ああ、ヒマリさん？こんばんは。その恰好、ヒマリさんもミリシラ様にクリスマスプレゼントを持っていらしたのですか？」 こんばんは、ラファエル様。ええ、そうです。という事はラファエル様もですね？ 「はい。ですけれど、ミリシラ様は先ほどこの家を飛び出していかれました」 ええ！？何があったんですか？ 「そうですね、最初から説明しましょうか。まず、丁度0時頃に私がミリシラ様の家を訪問したところ、出てきたミリシラ様は私を見るなり恐怖の絶叫をあげられまして。そのままの勢いで極大真空呪文を私の腹部に放ちました。結果として、私は体が上半身と下半身で真っ二つになってしまいまして、さっきまでそこの路上に転がっていたのです。幸い意識があったので、治癒の聖術で失った血液や臓器・服も含めて回復できましたが、私が倒れている間にミリシラ様は家から逃げ出してしまったのです」 情報量多過ぎぃ！大怪我じゃないですか！ていうかこの路面の濡れてるのってラファエル様の血液！？あとラファエル様の回復力凄すぎるし、そもそもなんでミリシラ先生ラファエル様を攻撃出来てるんですか！？ 「恐らく、私に対して敵意があったのではなくあくまで自分を守るために咄嗟に魔法を使ったからではないかと。私が抑制できるのは攻撃的な感情だけですので、助かりたいとか逃げ出したいという感情を元にした防衛反応での攻撃は阻止できないのです。とはいえ流石に体を引き裂かれたのは人生初でしたね。不思議なのは、なぜミリシラ様がそこまで怯えていたかなのですが」 ・・・す、すみません。それ多分私が原因です。昼間にミリシラ様に『夜更かししてサンタを見た子はサンタにさらわれる』って話をしてしまって。それで多分、ラファエル様の顔を見るより先に服が目に入ってパニックになったんじゃないかと。本当にすみません、私のせいでラファエル様を大怪我させてしまって！ 「気に病む事はありませんよ。こうして私は無事ですので。それよりミリシラ様が今頃、一人寒空の下で怯えているのではないかと思うと心配ですね・・・」 それは確かに・・・冷静になって戻ってきてくれればいいんですが・・・。 ●SIDE：ミリシラ　12/25　00：57　妖精の森 うう・・・サンタが本当に来よったわい。咄嗟にぶっ飛ばしたが、あれで倒せたかのぅ・・・。体が真っ二つになったのは見えたから、多分死んだと思うが・・・戻るのが怖いわい。 「もしもし、お嬢さん。こんな夜中にこんな森で泣いているなんて、どうしたんだい？」 うわ！？だ、誰じゃお主は！徘徊中の近所のおじいさんという訳ではあるまい！ 「ほっほっほ、私は通りすがりの子供好きのジジイさ。君のような子供が泣いていたようだから心配になってしまってね」 ワシは子供では・・・いや、いいわい。実はの、家におったら恐ろしい奴が訪ねてきたんじゃ。サンタクロースという子供をさらう魔物じゃぞ。 「ほうほう、それは怖かったねぇ。よしよし、これをあげるから元気を出しておくれ」 えっ、何じゃこの包みは？中身は・・・こ、これはワシがずっと探しておった超希少な魔導書ではないか！？なんでお主がこんなものを持っておるんじゃ！？ 「ほっほっほ、私には子供が欲しがっているものが分かる不思議な力があるんだよ。お嬢さん、もう家に帰っても大丈夫だよ。悪い奴なんていない。私が保証しよう。ではね、メリークリスマス」 あっ、ま、待って！・・・も、もうおらん。誰だったんじゃ・・・。・・・ん？い、いやおかしいぞ！？あやつ、なんでクリスマスを知っておるんじゃ！？ま、まさかあれが本物のサンタクロース・・・！？だとしたら、ワシがぶっ飛ばしたのは誰だったんじゃ・・・！？い、いかん、人間だったとしたら殺してしまったかもしれん！急いで戻らねば！ ●SIDE：ラファエル　12/25　10：26　王都立教会　教会前広場 お菓子やプレゼントを配る私たちの事を見て最初は不思議そうな顔をしていた子供たちですが、今はすっかり嬉しそう。クリスマスは成功のようですね、ヒマリさん。 「そうですね。でも本当に体は平気なんですか？」 ええ、もちろん。それに、戻ってきたミリシラ様もちゃんと私に謝罪をしてくれましたから、大事にはしませんよ。真夜中で誰も見てなくて良かったです。 「いや、それは本当にそうですね・・・ラファエル様が真っ二つになってるのを町の人が見たら国の一大事扱いですよ」 そうかも知れませんね。まあ、最終結果としては誰も不幸になっていない事ですし、これで良しとしましょう。ミリシラ様も、ヒマリさんのプレゼントした衣装を着て手伝ってくれていますし。子供たちと一緒になってはしゃいで、とても嬉しそうですね、ミリシラ様ったら。 「なんか、私の服っていうよりも、森で謎のおじいさんからもらった本が凄く良いものだったらしいんですよ。多分そっちの方が嬉しいんじゃないでしょうかね、あれ」 ふふふ、どうでしょうね。それだけではなく、サンタクロースという存在に対する恐怖からも解放されたからというのもあるのではないでしょうか。ヒマリさん、あんまり人を怖がらせるような話し方は駄目ですよ？ 「うっ、すみません。以後気を付けます」 ・・・あら？ミリシラ様がこちらに来ますね。 「おいヒマリ、ラファエル！何油売っとるんじゃ！お主らも子供にプレゼント配るの手伝わんかい！国民にサンタクロースの印象をしっかり植えつけんと行事として定着せんぞ！」 「はーい。ラファエル様、行きましょうか」 ええ、皆様の笑顔のために。・・・信者の皆様、メリークリスマス！今日という良き日を祝いましょう！