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【プレゼント】自立型宅配魔法
毎年、サンタクロースは大忙し。一晩で世界中にプレゼントを配らなければいけませんが、慢性的な人手不足に悩まされていました。そんな中一人の老サンタが腰を痛めてしまい、プレゼントを配れなくなってしまいます。他のサンタに負担をかけるのが申し訳ないと考えた彼は、近所に住む森の魔女に相談しました。 「魔女さん、ワシの腰治せないかな?」 「無理だね。アンタの腰は治したところでまたすぐに痛めるよ。体そのものがジジイすぎるんだよ」 「でもこのままではワシの担当するプレゼントを待つ子供たちが悲しんでしまう。トナカイや魔法の袋を扱えるのはサンタだけだ、サンタじゃない人では配るのが間に合わない」 「ふん、そうでもないよ。一人で配ろうとすりゃ、そりゃ無理だ。だけどね、プレゼント一つ一つが勝手に子供のところに行くなら間に合うさね」 「そんな方法があるのかい」 「あるよ。プレゼント出しな、魔法をかけてやる。そのプレゼントを欲しがってる子供のところに箱が自分で走って行くよ」 老サンタはその言葉を信じて、魔法の袋からプレゼントを取り出していきます。魔女は次々に魔法をかけていきました。するとどうでしょう、箱から巨大な蜘蛛の脚がにょきにょきと生えたかと思うと、目にも留まらぬ素早さで魔女の家から走り出していきます。 「おいおい、何だいありゃあ。あんなの子供たちが見たら怯えてしまうよ」 「人目のあるところじゃ隠れて移動するよ。だから夜になると本格的に街中に出て行って、子供の枕元に向かうさ」 「それにしたって何で蜘蛛の脚なんだい、薄気味が悪いなぁ」 「蜘蛛を馬鹿にしたもんじゃないよ。壁も天井も走れるし、糸を出せば風に乗って空も飛べる。音もなく子供の部屋に忍び込むには最高の生き物さ。枕元に着いたら魔法は解けてただのプレゼントの箱に戻るんだ、文句ないだろ」 「蜘蛛の体が丸見えな奴もいるじゃないか。ほら、あのイヤリングの入った箱だ。蜘蛛が脚にくくりつけてる」 「仕方ないだろ、サイズが小さきゃ足も遅くなる。かといって遠くに住む奴がでかい箱のプレゼントを欲しがってるとは限らない。箱が小さくて脚を生やせないなら、蜘蛛そのものに箱を持ってってもらうしかないだろ」 そうして魔女が魔法をかけたおかげで、この老サンタのプレゼントはちゃんと子供の元に届きました。ただ、イブの夜になって一斉に人里に繰り出した箱蜘蛛たちが残した足跡や蜘蛛の糸は街中に残り、クリスマスの朝は家の外壁や子供部屋の天井など、あちこちに糸が張っているのが見つかるのでした。 「どうだい、大したもんだろ。来年もやってやろうか?」 「それまでにワシの後継者見つけるよ」