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霧の森に迷う

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2024年11月19日 15時00分
参加お題:

秋も深まる、自然公園の森にやってきました。今日は久しぶりに風景写真を中心に撮っていこうという目的で訪れているのですが、やはり不安が的中し、納得のいく出来栄えの写真が撮れないでいます。 森の中の風景を目にするたびに、「ここに瑞葵ちゃんが立っていたら華があるだろうな」とか、「この落ち葉の上で本を読む玄葉は絵になりそうだ」とか、どうしても被写体の人間がいる前提でファインダーを覗いてしまっています。その事に気付く度に、頭を振るってイメージを振り払うのですが、少しも調子は上がりません。それどころか、森全体に霧が立ち込めてきて、視界まで悪化する始末でした。 「ううん・・・天気予報まで外れるなんて、運にまで見放されたか・・・」 しかしこちらにもプロのカメラマンとしての意地があります。この程度の逆境にへこたれてはいられません。そんな風に、半ば自棄になってずんずんと歩いていたのがまずかったのでしょう。気付いた時には、森の中で帰り道が分からなくなっていました。 「やってしまった・・・」 自然の中で悪天候を舐めてはいけないというのは鉄則だったのに、そんな初歩的な事さえ抜け落ちるほどに焦っていたようです。悪い事というのは重なるもので、スマホの充電も切れていました。どうやらポケットに仕舞う時にスリープにするのを忘れて、ずっとつけっぱなしでいたようです。 「何をやっているんだろうな、私は」 成果もなく、悪天候、不運が重なり、気持ちも落ち込んできました。これは俗にいう『スランプ』というものなのかも知れません。スマホがつかないため時間を知るにはデジカメの時計を見るしかありませんが、それによるともう夜と言ってもいい時間でした。 「せめて太陽が沈む前なら方角も分かりやすかったんだけどな」 とりあえず、水音に注意する事にしました。自然公園には湖があり、そこに流れ込む川の流れがこの森にはあるはずです。それを見つけられれば、川沿いに帰れるかもしれません。 「この辺りには水音はなさそうだな・・・」 そう思いながら、とりあえず空の明るそうな方角へ歩いていた時でした。 「イヤーッ!」 闇をつんざく絶叫が森に響きわたりました。私は思わず身をこわばらせます。今のは女性の悲鳴に聞こえました。しかも、それなりに近かったような・・・。 「だ、誰かいるんですかー!」 私は森の中で声を張り上げます。もし、私のように遭難した誰かが事故に遭った時の悲鳴だったら、状況によっては命が危ないかも知れません。しかし、何の返事もありませんでした。 「どうしよう、今の悲鳴の人が、もし意識を失ってたりしたら」 しかしどちらから声が聞こえたのかもよく分からないまま、むやみにうろつくのは非常に危険です。仕方なく、呼びかけの声を上げ続けていると、こちらに近づく足音がするのに気が付きました。後ろの方です。 「誰かと思ったら、カメラマンさんだったのね」 振り向くと、シリアちゃんが歩いてきていました。まるで散歩でもしているかのような気軽さで、平然と私に声を掛けてきます。 「し、シリアちゃん!あの、さっき森の中で悲鳴が聞こえて」 「ああ、ごめんなさい。それ私よ」 え?と私が怪訝な顔をすると、シリアちゃんは頭をかいて説明します。 「ほら、空手とかであるでしょ、掛け声。攻撃する側が『イヤーッ!』って叫んで、攻撃を受けた側は『グワーッ!』っていうやつよ」 いや、『グワーッ!』の方は聞いた事無いけど。 「じゃあ、誰かが危ない目にあったりとかはしてないんだね?」 「してないしてない」 シリアちゃんはそう言いながら、再確認するように自分の身だしなみを確認したり、顔を手鏡で見たりしています。こんな暗い中で見えるのかな・・・?ひとしきりシリアちゃんのアクションが終わると、今度はシリアちゃんが私に尋ねてきます。 「それで?カメラマンさんはそもそもどうして森の中を一人さまよっているのよ?」 「ああ、実はそれなんだけどね・・・」 私はシリアちゃんに事情を説明しました。風景写真を撮りに来たけど上手くいかず意固地になっている内に迷子になった事を。恥ではありますが、帰れないと玄葉にも心配をかけてしまうし。 「・・・カメラマンさん、とりあえず私のスマホ貸すから、家に連絡入れなさい。あと、少し時間があるようなら付き合ってくれる?」 「え?うん・・・」 シリアちゃんがスマホを貸してくれたので、家の電話にかけて玄葉にもう少ししたら帰ると伝えました。それから、先を歩きだしたシリアちゃんの後をついていきます。 「ねえ、どこに向かってるの?」 「見晴らしのいいところよ。カメラマンさん、こんな鬱々とした森の中で考え込むから余計に落ち込むのよ。視界の開けたところまで出たら、詳しく話を聞かせてちょうだい。誰かに話せば考えが整理できるかもしれないでしょ」 ・・・シリアちゃんって、口調や態度はそっけない風に見えるけど、意外と面倒見がいい子なのかも知れません。私はシリアちゃんの背中を追いかけながら、霧と闇に包まれた森の中を歩いて行くのでした。

コメント (10)

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早渚 凪

もうちょっとしたら帰れますよ。この話の続きは、次のお題「星降る夜」でやります。もう完全にAI小説だなぁ・・・

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2024年7月よりAIイラスト生成を始めた初心者です。 全年齢~R15を中心に投稿します。現在はサイト内生成のみでイラスト生成を行っています。 ストーリー性重視派のため、キャプションが偏執的かと思いますがご容赦願います。

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