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ミリシラ様の知人紹介“狩竜者”「キレーヌ・ナマク=ラジャ」
地球の皆の者、こんクエスト~!全知全能の大賢者「ミリシラ・シッタカブール」様じゃぞ!今日は危険な変異種の魔物が出現したという事でルナティックバレーという渓谷地帯に来ておる。危険な魔物の討伐なので、現地をゆっくり紹介してやれんのは残念じゃわい。ワシは既に冒険者を引退した身じゃから、本当なら現役の冒険者の手柄を取るような真似はするべきじゃないんじゃが、冒険者ギルドに泣きつかれてのぅ。・・・おお、おったおった、あそこで水を飲んでおるアレじゃな。ちっと今のうちに説明しておくか。 変異種には「ルナティック・メタル・ドラゴン」と名前が付けられたが、こいつ魔法反射装甲のような鱗に覆われておるらしい。そして硬くて物理攻撃も効かん。そして竜種であるがゆえに生命力が強く毒も無効ときたもんじゃ。そりゃなまじの冒険者じゃ無理じゃわい。ワシだって一人じゃキッツいわ。 そこで今日はギルドから派遣された手練れの冒険者と一緒に来ておるぞ。紹介しよう、「キレーヌ・ナマク=ラジャ」じゃ。 「やぁやぁチキュウジン!・・・でいいのかな?ボクはキレーヌ!見ての通り剣士だよ!」 見ての通りか?鎧も着ておらんくせに。キレーヌはな、ワシの冒険者時代の仲間だった剣士「オーレル・ナマク=ラジャ」の孫娘なんじゃ。オーレルの奴は既に病でこの世を去ってしまったが、現役時代は怪力無双、岩の巨人も鋼鉄の城門も剣一本で切り裂くような人間じゃった。その威容から“猛裂(もうれつ)”の異名もついておったくらいじゃな。息子のファコボレはそんな父を支えるために医学の道を選んだが、孫のキレーヌが祖父譲りの剣の腕と怪力を持ち合わせておったので祖父に憧れ剣士になったそうじゃぞ。 「そんなボクも今や一流の冒険者!“狩竜者(しゅりょうしゃ)”の異名で呼ばれるくらいに強くなったんだよ!」 実際、竜の鱗や甲殻を剣一本で叩き切るのは相当の腕前が必要じゃ。そんな異名がついてる時点で並みの人間では無い。今回の変異種はかなり硬いのでキレーヌの剣が通用するかは正直やってみんと分からんが、ワシの魔法で補助しつつ討伐しようと思う。・・・ところで本当に鎧は着て来なくて良かったんか?そんな踊り子みたいな服では一発もらったら致命傷じゃぞ? 「ボク、いつもこの格好で戦ってるよ?鎧って動きにくいから嫌いなんだよねー。あと、砂漠の日差しとか雪山の吹雪に晒されると余計に環境の温度を強く感じちゃうから」 お主雪山でもその恰好なんか!?・・・そう言えばオーレルもいつも上半身裸じゃったな。血筋じゃのう・・・。 「ミリシラ、あいつそろそろ移動しそうだよ。追いかけないと。一応ミリシラも剣一本持っておく?」 いらんいらん、ワシその気になれば魔法で剣くらいその場で作れるわい。キレーヌ、お主先行せい。竜相手はお手の物なんじゃろ? 「オッケー、任せといて!」 「もーなにこいつー!ミリシラ、こいつ肉質硬くてやだー!弾かれてばっかりで戦ってて気持ち良くない!」 うっさいわ、黙って攻撃せい!ワシだって呪文直接は跳ね返されるから自分の体に付与して肉弾戦やっとるんじゃぞ!しかしこいつ金属質の割に雷属性の通りがなんか微妙じゃな! 「ブレスしてくれる奴だったら隙をつきやすいのに、こいつ格闘戦専門みたいだしねー!ルナティック・バーサーク・ドラゴンの変異種だからかな!?」 いいところばっかり受け継ぎおって!こいつも夜行性のはずなのに全然昼でも元気じゃし!満月出てなくてもくっそ凶暴じゃし!こりゃあと二人くらい連れてくるべきじゃったかな。おいキレーヌ、大技仕掛けるぞ!ワシに合わせろ! 「おっけ・・・じゃない、待ったミリシラ!あいつ後少しで一回逃げるから大技は撃っちゃダメ!」 何じゃと?なんでそんな事が分かる・・・って本当に撤退しよった!何でじゃ!? 「あいつのお腹がぐ~って鳴ったんだよね。戦ったからお腹が空いたんだと思うよ。今逃げたのは一回弱い獲物を捕らえて食べて、ボクたち外敵に対して迎え撃つ体制を整えるつもりなんだよ」 よく観察しておるなぁ。しかしどうする?やっぱり事前情報通りまともに攻撃が通じんのじゃが。 「それも何となく行けそうな予感するよ。ミリシラ、ボクの剣に魔法付与してくれる?炎属性がいいな」 炎か・・・よし、奴に追いついたらかけてやるわい。 む、おったぞ。魚食っておるわい。じゃあ炎の付与じゃったな。ほれ、行けキレーヌ! 「今度こそ、その首もらった!」 おお、キレーヌの剣が通った!そうか、炎の熱で金属の鱗を溶断したんじゃな!竜だから炎に強いと思っておったのが罠じゃったか。 「ミリシラ、追撃お願い!」 よし、ならワシも炎の剣を生成して・・・!喰らえ化け物め!うおりゃ~! 「討伐完了!いやー、斬撃通った後もしぶとかったねぇ!」 さすが変異種じゃな・・・もう戦いたくないわい。さて、冒険者ギルドに連絡してこいつの死骸を回収してもらわんとな。鱗や甲殻を分析すればもし次に出現しても弱点を突いて倒せるかもしれん。毎回毎回ワシとキレーヌが呼ばれたらたまったもんじゃないからのぅ。 「へへ、でもボクはミリシラと一緒に狩りするの好きだなぁ!またヤバイ奴が出たら呼ぶね!」 ・・・また?おい待てキレーヌ、まさか冒険者ギルドがワシを呼んだのはお主が一枚噛んでおるんじゃなかろうな? 「えっ!?ナンノコトカナー、ワケワカンナイヨー」 清々しいほどの棒読みじゃなおい!お主次はちゃんと相談せい、じゃないと事前に作戦すり合わせられんじゃろ。次ぶっつけ本番やらせたらお主を縛り上げてヒマリにその乳しばかせるからな。 「やだよ、それボクおっぱいもぎ取られるじゃん!」 さて、今日は疲れたしこの辺にしておくかのぅ。キレーヌ、発信終わるからお主その辺で水浴びしてきても良いぞ。 「あ、ホント?汗いっぱいかいちゃったから助かる~」 見てくれてありがとうなのじゃ、おつカブール~! ワシも水浴び・・・いややめとこう、また発信事故が起こらんとも限らんし。