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【パーカー】仲良し大作戦
冬にしては温かめの気温の今日、私は桃宮ちゃんを街中のカフェに呼び出していました。桃宮ちゃんの胸を触った話で橙臣ちゃんの信頼を失ったようなので、何かリカバリーのアドバイスをもらおうと思っての事です。桃宮ちゃんはケーキを食べながら私の話を聞いてくれました。 「恋織ちゃんらしいなぁ。あの子凪おじさんに限らず基本男子嫌いだからねー」 「やっぱりそうなんだ。そうすると下手に刺激しない方がいいかな、ほとぼりが冷めるまで待って・・・」 私がそう言うと、桃宮ちゃんは首を横に振ります。 「ダメだよおじさん、恋織ちゃんと仲良くなりたいんでしょ?いい?話すでも遊ぶでもなんでもいいけど、大事なのは関わる事だよ!だって人と人とは勝手に仲良くなったりしないんだから。仲良くなりたい子がいたらガンガンアプローチしなきゃ!」 確かにその通りです。友達多い子は言う事が違うな。しかし私は橙臣ちゃんには大分警戒されているし、下手に積極的になったりしたら最悪御用です。 「うーん、恋織ちゃんってきつい事は言うけどネチネチいつまでも怒ってるタイプじゃないから大丈夫だと思うけどなー。とりあえず会いに行こっか。この時間だったら犬の散歩で自然公園にいると思うし、一緒に行こ?」 桃宮ちゃんはケーキを口に押し込むと早速行動開始しました。明るい子って基本行動力あるよね・・・。 桃宮ちゃんと自然公園に向かうと、ちょうど犬を連れてこちらに向かってくる橙臣ちゃんを発見しました。桃宮ちゃんすごいな、時間も場所もドンピシャ。 「おーい、恋織ちゃーん!」 「ん?弥美・・・と早渚」 私の姿を認めた途端、橙臣ちゃんの視線が険しくなります。うわぁ、近寄りがたい。 「何の用?」 「凪おじさんがね、恋織ちゃんと仲良くしたいんだって!だから連れてきたよ!」 桃宮ちゃんが私の背後に回ってぐいぐい背中を押してきます。橙臣ちゃんの目の前まで押し出され、その鋭い視線を下から思い切り喰らいました。犬は興味深そうに私を見つめて私の周りを旋回し始めます。 「アンタ、弥美を巻き込むとはいい度胸ね。本当に通報されたい?」 「それは勘弁してほしいな・・・私はただ、橙臣ちゃんが思うほど変質者じゃないって分かってほしくて。嫌われたままなのは悲しいし」 「どうかしら・・・っ!?」 橙臣ちゃんが不意に私に密着してきました。なんだ、どうしたんだ?と思っていたら、私も足が自由に動かない事に気付きます。視線を落とすと、橙臣ちゃんの犬が私たち二人の周りをぐるぐるしていた事で、リードが私たちの脚を絡めとってしまっていました。 「ちょ、バランスが!」 「橙臣ちゃん、危ない!」 私たちはバランスを崩して草の上に倒れ込みました。ぎりぎりで橙臣ちゃんの後頭部に手を差し入れられたので彼女の頭は守れましたが、なにぶん足の自由が効かないので体全体で橙臣ちゃんを押し倒したみたいな格好になってしまいます。 「ちょっと、どいてよ!」 「いや足が動かなくて!あ、橙臣ちゃんあんまり体をよじられると!」 二人の下半身がリードで縛られた状態なので、私の下半身が橙臣ちゃんのお腹に押し付けられています。その状態でもぞもぞされると・・・。 「あ・・・」 「ごめん」 橙臣ちゃんもそれに気づいてしまったようで、ぴったりと動きが止まりました。非常に気まずい。そうだ、桃宮ちゃんに助けてもらおう。 「桃宮ちゃん、リードをほどいてくれると・・・」 「ダーイブ!」 背中に急に柔らかい重みがのしかかってきて、たまらず私は体重を支えていた腕を崩してしまいました。上半身も橙臣ちゃんと密着し、私の胸板に彼女の膨らみが押し付けられる感触が伝わってきてしまいます。そして背中のこの暴力的なまでの二つの柔らかい存在感は・・・。 「ちょっと弥美、アンタ何のしかかってんのよ!」 「だってー、おじさんと恋織ちゃんだけ楽しそうなんだもん」 楽しくない!というか橙臣ちゃんがピンチだ、私+桃宮ちゃんの体重がかかってるんだから重いはずです。私は腕をつき直し、なんとか体を少し持ち上げます。 「桃宮ちゃん駄目だって、橙臣ちゃんがぺちゃんこになっちゃう!」 「誰がぺたんこよ!弥美が規格外なだけで私だって年齢相応にはあるんだから!」 うん、それは今確かに実感してる。・・・じゃなくて!早くなんとかしなくては。女子中学生二人とくんずほぐれつしている所を見られたら外聞が悪すぎる。必死に足を開くと、なんとかリードが緩んでくれたので、私たちは窮地を脱する事が出来ました。 「ひ、ひどい目に遭ったわ」 立ち上がった橙臣ちゃんは、しきりに自分の胸を触っています。どうやらずれたブラを直しているようです。私が視線を逸らして正座で待機していると、服を整え終わった橙臣ちゃんの冷たい声が降ってきました。 「で、何だったっけ?『私が思ってるほど変質者じゃない』?」 「ごめんなさい」 女子中学生二人にサンドされ下半身まで押し付けた男が変質者じゃないって言っても説得力ゼロです。謝るしかない。 「・・・まあ今回はウチのバカ犬のせいだから。シラヌヒ、アンタ今日おやつ抜き」 「クゥーン・・・」 この犬シラヌヒっていう名前なのか・・・シラヌヒは悲しそうに鳴くと、私の背後に隠れて恨めし気に橙臣ちゃんを見上げます。 「そんな顔してもダメ。・・・分かったわよ、半減で勘弁してやるわよ」 甘いなぁ。許されたシラヌヒはとことこと橙臣ちゃんの足元に戻っていきます。 「恋織ちゃんダメだよ、おやつ半減なんて虐待だよ!いいじゃんおじさんと仲良しできたんだから!」 「何がいいのよ!私こいつのお・・・お、押し付けられたんだから!」 「ちっちっち、まだまだだなぁ。私なんておじさんのお腹にビキニで跨った事あるもんね!」 「何のマウント!?っていうか弥美にそんな事させてんの!?やっぱりスケベオヤジじゃない!」 橙臣ちゃんは早足で逃げてしまいました。余計悪化しただろ、これ・・・。 「おじさん良かったね、ちょっと仲良くなれたっぽいよ」 「どこが!?」 「恋織ちゃんってスキンシップ好きだから。次に会ったら頭撫でてあげると喜ぶと思うなぁ」 「通報率の方が高そうなんだけど・・・」 急に警察が家に来ない事を祈るしかないな・・・。