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幽魅と鈴白姉妹への調査協力依頼
私は宿城サイトの事を調べるべく、とりあえず彼の会社に張り込んでみました。宿城は定時になると自身の高級車に乗り込み、マンションの立ち並ぶ方面に走り去っていきました。恐らく自宅に帰るのでしょう。そもそも、尾行のプロでもない私に何ができる訳でも無かったでしょうから、何か怪しい動きがあったとしても捉えられたかは定かでありません。 「あれー、凪くんだー」 私が無力感に唇を噛んでいると、頭上から声が降ってきました。見ると、幽魅がぱたぱたと羽ばたいています。 「何してるの?夜歩きは危ないよー?」 翼をリュックに変化させ、幽魅は地上に降りてきました。私は幽魅に今起こっている事態を説明しました。 「えー、それはひどい!その晶さんって人が可哀そうだよね!」 幽魅は私の話を聞いて憤りをあらわにしました。そして続いて、こんな事を言い出したのです。 「ねえ凪くん、私ならその宿城サイトって人に密着して素行調査できると思わない?」 ・・・成程、言われてみれば幽魅は私以外には見えない“幽霊”です。壁をすり抜けたり空を飛んだりできる彼女なら、四六時中宿城を見張っている事ができます。 「さすがにカメラとか持ってるとそれが見えちゃうから、形になる証拠は残せないけど、何をしてるか見ておくだけならできるよ」 私は幽魅にその密着調査をお願いしました。そして何かあったら私に伝えてもらえれば先手を打って動けるかもしれません。 「任せて!必ずいい結果を持ってくるからね!」 幽魅はぐっと親指を立てると、ヤドリギカンパニーの中に消えていきました。私も私で何かできる事をしないと。とりあえず、桃宮ちゃん以外の知り合いにも連絡して情報を集められないか聞いてみるか・・・。 ダイニングに置いてあったスマホに通知ランプがついてる。私とおねーちゃんの両方だ。 「おねーちゃーん、何かメッセージ来てるよー」 おねーちゃんにスマホを差し出しつつ、私のスマホをつけると凪さんからのメッセージだった。 「『宿城サイトについての噂を知っていたら教えて欲しい』・・・凪さん、何調べてるんだろ」 「宿城ってあのヤドリギカンパニーの社長だよね。よくCM出てる人」 おねーちゃんも私も宿城さんの顔は知ってるけど、何か良くない噂のある人なのかな? 「おねーちゃんは何か聞いた事ある?」 「いや?分かんないねー。とりあえず友達みんなに聞いてみよっか」 「そうだね」 凪さんにとりあえずの返信で『特に思い当たりませんが、友達に聞いてみます』と返しておいた。 「何かわかったら早渚さん喜んでくれるかな?」 「うん・・・頑張らなくちゃ」