お風呂で妹をカット＆シャンプーするのはギリセーフだと思います

「あー、鬱陶しい」 私がリビングに入るなり、先にいた玄葉が後ろを向いたまま呟きました。また何か機嫌を損ねてしまったのでしょうか。恐る恐る玄葉に尋ねました。 「えっ、お兄いたの？違う違う、お兄が鬱陶しいって言ったんじゃなくて、髪が伸びてきたなって話」 確かに、玄葉の髪は前より伸びてきています。肩に届かないくらいだったのが、今は肩甲骨をくすぐるくらいの長さです。カットの予約は入れてないのでしょうか？ 「いつもの美容院の美容師さんが手を骨折しちゃって、しばらく無理なんだって」 それは困りました。玄葉は「肩」と「わきの下」がとても敏感な体質で、服が擦れるだけでもむずむずして落ち着いていられない女の子なのです。だから美容院のカットクロスも苦手で、それを分かってくれている美容師さんじゃないとカットが失敗しやすいのでした。髪を縛るのも、引っ張られる感じがして苦手だそうで、そうなると残る手段は一つです。 「・・・？」 ひとりで頷く私に、玄葉は首を傾げました。 「お、お兄・・・ほんとに、その・・・するの？」 数分後、私と玄葉は浴室にいました。玄葉には服を全部脱いでもらって、バスタオル一枚の格好になってもらっています。 「確かにお兄は器用だから失敗しないだろうけど、すごい恥ずかしい・・・」 私は昔使っていたカット用のハサミを持ち出してきていました。そう、私が玄葉の髪をカットすればよいのです。終わったらそのままお風呂に入ってもらえば丁度良いと思って、こんな格好をさせてるのでした。 シャワーチェアに玄葉を座らせると、私は早速玄葉の髪をいつもの長さにカットしていきました。さほど複雑な仕上げの髪型じゃないので、私でも十分再現できます。大きな問題もなくカットが終わり、そのまま玄葉の頭をシャンプーしてあげました。こうしていると、玄葉が小さかった頃お風呂に入れてあげていた事を思い出します。 「あの頃とは違うでしょ、お互い成人してるのに兄にシャンプーしてもらう妹とかおかしいから」 何歳になっても玄葉が私の妹なのは変わらないので、可愛がっても変な事は無いと思うのですがね。シャワーで泡を洗い流し、トリートメントも終わらせて、私の任務は完了です。玄葉は軽く体を隠しながら、私におずおずと話しかけてきました。 「お兄、ありがと・・・。あの、お兄の服が私の毛だらけになっちゃってるけど、一緒にお風呂入るのは心の準備ができてないから・・・」 分かっています。さすがに一緒にお風呂に入るつもりはありません。私は玄葉を残し、道具と切った髪を持って引き上げます。排水口は後でちゃんと掃除すれば大丈夫でしょう。 それにしても、玄葉の綺麗な肩と背中をじっくり見られたのは役得でした。こっちこそお礼を言いたいくらいですが、それを口に出すとまたヘンタイ呼ばわりされるので、口が裂けても言いません。