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肉と制服、黒天使
「いやですよ。隊長!! なんでまた、私がこんな服を着ないといけないんですか」 要人の邸宅の控室で、女学生の制服のような服をきた、金髪ポニーテールの少女が怒っている 「この前は、喜んで着ていたじゃないか」 怒られてる隊長はスーツ姿だ。 どうやら、普段とは違う、半ばフォーマルなドレスコードが必要な任務らしい 返された、金髪ポニーテール少尉は、ちょっと顔を赤らめて俯きながら答える 「あっ、あれは、あの時は私が馬鹿だったんです。 私、調べなおしたら、あの格好は、ビッ、娼婦のアイコンらしいじゃないですか」 「それは、さすがに女学生に失礼っていうもんだ」 少尉は、言動の揺れ幅が激しい 以前の任務で、よくわからずに女学生の格好で、隊長とデートもどきをしたのが、今更ながらに恥ずかしいのだろう 「学生の制服っていうのは、婚礼から葬式までなんでも使 ってよい、フォーマルな格好だぞ。 それに、今回は非公式のパーティーだ。 あまり硬く護衛するわけにはいかない。 要人の妻子、幼い子供たちも来るらしいからな。 その点、お前ならば、親戚の学生という体で、うまく紛れ込めるし、 正式なドレスなんかよりはよっぽど動きやすいだろう」 「あら~、それってもしかして隊長の趣味ですか~」 ふたりがぎょっとして振り返ると、 いつの間にか部屋に入っていた、銀髪ロングヘアーの伍長が邪悪な笑みを浮かべていた。 当然のごとく、女学生風のブレザーを着こんで、立派なソファーにふんぞり返っている 「いいじゃないですか。着てあげれば。後で沢山爆発できますよ~」 そこでさらに、笑みを深くすると 「無理だったら、私も準備はできているから、交代しましょうか。 若くてかわいい女の子の方が良いに決まってますからね」 「なっ、ななな、なにを言っているのよ」 面白いようにうろたえる金髪ポニーテール 「なにって、警備の話でしょ?警戒されちゃいけないんでしょ」 (伍長、お前は別の方向で目立つし危ない……) 伍長は、隊長の心を読んだかのように流し目を送ると 「爆発するのは夜まで待ってくださいね~」 入ってきたときと同じように気配無く部屋を出て行った。 「休憩時間には、バーベキューの差し入れがあるらしいから、それまで頑張ってくれ」 「了解・・・・・・」 バーベキュー会場 それにしても、このお偉いさんの国の人たちってよく食べるわね アイスクリーム大好きで、肉も山盛り コーラもバケツでがぶ飲み でも野菜は食べない 背丈も横幅も、面の皮も厚くて 護衛しようにも、はみ出したお腹の肉に、弾が当たるんじゃないかしら うう、あんな食べっぷり見せつけられたら、おなかすいてきた 親戚か何かのように、要人の傍に寄り添っている少尉は、自分のおなかの音が鳴らないか気になった 紛れ込んでいるのは、警備するためなので、もちろん要人と一緒に食事ができるわけではない。 「状況知らせ」 「ブラックブラボー、異常なし」 定期連絡に、小声でインカムに応答する 「ブラボーシックス了解。ブラックチャーリー交代せよ」 「ブラックチャーリー、急行する」 やった、ご飯だ 銀髪ロングの伍長が、口の端だけで、器用ににやにや笑いを浮かべながら近づいてきたので、 少尉は気を引き締めなおして、待機所である裏に向かう 「おう、おつかれ、ゆっくりとはいかんが、時間と腹が許す限り食べてくれ」 隊長は、自分の席の隣に副長を誘う 「うーん、とってジューシ!!とっても大量 彼らは食べ物に関しては出し惜しみしないのが良いわね」 高官らにつられたのか、パクパク肉を食べまくる少尉 「あんまり食いすぎたらいかんぞ。動きが鈍る」 「わかってますよ。ところで、彼らの軍隊って、大事な作戦の前は、朝からでもステーキが出るとか言いますね」 「ああ、お国柄かな。肉を食わないと力が出ないのかは知らんが」 「お国といえば、オタクの国では、焼肉食べたらクサい仲とか言うみたいですね」 「焼肉ではなくてバーベキューだがな」 雑談をしながら、幸せそうに肉を頬張る少尉を見て、 「まあ、このまま何も起こらなければよいがな」 隊長は小さな声でつぶやく。 隣の席に静かに座った男性は、高官の国の諜報部員だった 「さて、食べ終わったら午後の警備も気合を入れて行くぞ」 「了解!!」 おなかがふくれて満足したのか、少尉は元気よく答えた