一筋の闇
アーゼリンが(社会科見学の授業をさぼって)、灯台で一曲歌うようです https://suno.com/song/d31cd4a8-8e82-411e-97b4-a063569d92ae 「アーゼリン生徒はどこに行きましたか?」 「えっ、アーゼリン様は……、たしか、楽器を待って岩場の方に降りていきましたけど……」 「ありがとう!!」 (まったく!!家族で旅行に来ているわけじゃないのよ) そのころ、断崖絶壁に経つ灯台の崖直下の岩場の上で 灯台を背後にリュートを構えたアーゼリンは 「アーゼリン生徒!!すぐに戻って」 『 [1番] 冬の海に響く風 夜の帳を切り裂いて 星なき空、遠く霞む 行くあて知らぬ影の船 銀の弦が紡ぐ音 揺らぐ灯火、闇を裂き 願いを光に変えながら 夜の海へと溶けてゆく [サビ] 灯台の光、航路を照らせ 彼方の船に、道標(みちしるべ)を 祈りの歌を風に乗せ 暗闇を越え、辿り着け [2番] 魔法の灯が舞う灯台 旋回する光の矢 運命(さだめ)の波に抗う船 行く手を守る影の歌 リュートの弦に宿る願い 軋む岩場に夜が哭(な)く けれど奏でる、この調べ 命(いのち)を抱き、海を渡れ [サビ] 灯台の光、絶望(やみ)を裂いて 迷える魂、導くため 祈りの音は風に揺れ いつか夜明けを連れてくる [ブリッジ] 凍てつく闇も 光があれば―― 進む者たちよ 振り向くな、ただ行け [ラストサビ] 灯台の光、未来を照らせ 遠くの命、守るために 夜を彷徨(さまよ)う影の船 この歌と共に、辿り着け [アウトロ] リュートの音が凪に溶け 海の彼方に光、残る』 「シルビア先生!!、アーゼリンさん!!」 捜索の声にはっとなって気づいた時には、すでにシルビアは母の歌声にすっかり引き込まれた後だった。 「どうしたんです!!二人とも!!」 息せき切って、各種救助用具を身に着けた体育教師に詰め寄られるシルビア。 「こっ、このじき、この岬の側には珍しい幻獣がやってくることがあるの。 ちょっと見かけて追いかけてしまいました。 すいません」 ちらっと見かけた不思議な小さな生き物を出しにするシルビア。 思わず母の歌声に聞き入ってしまったとはいえないシルビアだった