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狐の影絵

「このように、自らが努力して招き寄せた幸運を、他者に分け与えるのです。 そうすると、分け与えられた人も、幸運が訪れた際にあなたに幸運を分けてくれます」 下町の小さな礼拝上の舞台の上で、幸運神の巫女が演説をしている。 小さいと言いながらも、祭壇と演壇が供えられたそれなりに立派な物だ。 「自らがえた幸運を、分けるという事に、抵抗があるかもしれません。 無理もないことです。 あなたはその幸運を得るために、並々ならぬ努力をしていたはずですから。」 そこでダキニラは一瞬言葉を切った。 「だけど、あなたが努力をして幸運を勝ち取ったという事は、分け与えられた人にも伝わります。 そこまで大事な幸運を分けてくれたのならば、と、その人も幸運を分けてくれるかもしれません。」 背後のスクリーンに、彼女の影が明かりを映してゆらゆら揺れる。 「分け与えることは、人のためではないのです。あなたのためなのです。」 聞き様によってはかなり胡散臭い話で、彼女の影も嘲りを含むように揺らめいていたが、 彼女の人徳なのか、不思議な説得力を持って説法は終わった。 本来はこの礼拝堂の主である、チャーリー・ウッドの説法の時間であったのだが、緊急の用があるとのことで、幸運神の神官としては同等以上の徳を持つ、ダキニラが代わったのだ。 「巫女様、ちょっと厄介ごとが発生した」 そこに、この礼拝所の本来の主が戻ってきた。 彼は来客である高貴な女性セリーヌとの面会のために、この場をダキニラに任せていたのだ。 彼は、信仰に本格的に目覚めるきっかけが、幸運心の巫女であるダキニラであったために、年下の彼女に対しても敬意を払う。 中年の盗賊という事で人格的に技能的にも成熟・安定していて、そこに新たにプリーストとして目覚めたのだから、その存在は異色を持って知られている。 「なに、どうしたの?」 並々ならぬ、チャーリーの様子に、ダキニラも緊張を増す。 「リリスさんを気に入らん連中が、彼女のファンに手を出した。」 反目しながらもお互い認め合う友人の名前を聞き、ダキニラの表情が瞬時に代わる。 「どうも、巫女さまや、こっちの神殿そのものを攻める搦め手らしい」 ダキニラはゆっくりと立ち上がった。 その背後に踊る影は、まさに伝説上の妖狐の美女のようだった。

さかいきしお

コメント (19)

ルノハ
2025/01/13 10:21
白雀(White sparrow)
2025/01/12 12:52
ガボドゲ
2025/01/12 11:09
CherryBlossom
2025/01/12 09:33
五月雨

ふふふ、これで邪魔な奴らを始末出来るぞ! ふはーはっはっはっ!

2025/01/12 09:31
Cocteau
2025/01/12 08:47
ippei

映った影が笑う表現が出来てすごい

2025/01/12 06:17
すえん💫
2025/01/12 05:52

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