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内緒の日記
「となると、残る手掛かりは」 ダキニラは、整えられた部屋の中で、鏡台の方を見やる。 下町にある比較的裕福な商家の、娘の部屋だ。 娘が家出したという事で、下町礼拝所に勤める、幸運心の神官と巫女、チャーリウッドとダキニラに相談が来たのだ。 二人とも、怪盗神父、盗賊巫女というけったいな二つ名を持つことを知ってのうえだ。 ただの官憲や、裏の情報網を頼るよりはまし、と考えたらしい。 「開けるしかないよね・・・・・・」 ダキニラは無意識に周囲を見渡してから、鏡台の引き出しの前にしゃがみこみ。 しゃがんでいたのはほんの数秒、立ち上がったダキニラは、引き出しを開けた。 中には、豪華だけど可愛らしい日記帳。 なんと、日記本体にも錠前が掛けられている。 もちろん、そんな鍵は盗賊巫女にかかっては無いも同然。 数舜で鍵を開けて日記を開いたダキニラは。 「くぇrちゅいおp@!!」 意味不明な絶叫を上げた。 数舜で真っ赤な顔になって日記を放り出す。 速読で瞬時に中身を読み取ったダキニラは、その中身まで瞬時に理解してしまった。 「どっ、どうした?巫女殿?」 使用人に聞き込みをしていた、相棒の怪盗神父、チャーリーウッドが驚いて部屋の入り口に顔を出した。 「ばか~!!出ていって!!」 ダキニラは、チャーリーウッドの理力波(フォース)の魔法を放つと、なぜか自分がその横を走り抜けて部屋を出ていった。 「なっ、なんだ?巫女殿は。なにをみつけ」 そこまで言って、チャーリーは床に放り出された日記帳を拾い上げると、読み解き始める。 流石に途中、顔を顰めるところはあったがそこは年の功。 「あっ、あの・・・・・・、神父様?」 さいごまで読み解くと、心配して後ろについてきていた、娘の母が声をかける。 「安心されよ。娘御は無事だ。駆け落ちだが行先の見当は付いた」 母親を安心させるように力強く言う。 「ああ・・・・・・、生きていてくれるのならば良いのです。良かった」 母親が、しみじみと感謝する言葉が、荒らされた娘の室内に響き渡った。