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春のピクニック訓練
――それは、士官候補生にとって過酷な現実。 「士官候補生の諸君、今日は楽しいピクニックだ!!」 朝の点呼でそう宣言したのは、いつもの調子でテンション高く立つブロント少尉。 装備はフル、荷物は山のよう、スカートはなぜかきっちりプリーツ。 「20キロなんてピクニックだろ? シニアでも歩くぞ。お前ら、まだ若いだろ?」 少尉は道端に咲く花に目をとめ、鳥のさえずりに耳を澄ましながら、軽やかに山道を登る。 その後ろで、士官候補生たちはバテバテ。荷物に潰され、足がつり、心が折れかけていた。 「生きてるってことは、食べられるってことだ!」 昼食時、アリスパックからレーションを取り出し、誇らしげに言うブロント少尉。 その背後では、地面にへたりこんだ候補生たちが、空を見上げながら魂を抜かれていた。 富士見軍曹は隣で、引きつった笑みを浮かべながら、冷静に一言。 「……まあ、これでも軍隊では"楽な訓練"に分類されますから」 「え? 嘘でしょ?」と絶望する候補生の声は、山風にかき消された。