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ブロント式・春の体力測定 with 天使飴

春の午後。 風に乗って屋台の匂いがふわりと流れ、校舎の外には微かな祭囃子が届いていた。 「わぁ……!」 ブロント少尉は、くるくると金髪のポニーテールを揺らして、屋台の前で目をキラキラと輝かせていた。 その視線の先には、飴細工職人が丹念に仕上げた鶴の飴細工。透き通った翼にほんのりと赤みが差し、まるで空を舞う瞬間を封じ込めたようだった。 「すごいです、これ……飴って、こんなに繊細で、綺麗で、儚いんですね……!」 まるで年頃の少女のように頬を赤らめながら、うっとりと見つめるその姿は、どこから見ても“天使”。 職人のおじさんは、その熱意と純粋な感動にすっかりやられてしまった。 「嬢ちゃん、あんた……いい目ぇしてるな。ちょいと、試してみたいことがある」 しばらくして、職人が手渡したのは、翼を広げた少女の飴細工だった。 金髪のポニーテールに、黒の軍服風のミニドレス、そして可憐な笑顔。 「す、すごい……この飴、天使みたいです……!」 少尉は感激して両手で受け取り、ぐるぐる回しながら眺めた。 (まさか自分そっくりとは思いもせず) 「こんなに素晴らしい飴細工、みんなにも見てほしい……!」 ブロント少尉の目がまた光る。 「――そうだ、これを体力測定のご褒美にしよう!」 翌日。 演習場に候補生たちが集合する中、ブロント少尉は胸を張って現れた。 「諸君、本日は春季体力測定を実施する。各自、全力を尽くし臨むように。」 背後の机の上には、**精巧な「天使飴」**が袋詰めされ、整然と並んでいた。 「上位五名には、特別褒賞として――この“天使の飴”を授与する。」 どよめきが走る。 「この飴細工は、精緻を極めた職人技の結晶であり、ただの甘味ではない。手にする価値は十分にあるはずだ。」 (ちょ、少尉、それ……) (いやどう見ても少尉じゃないッスかこれ!?) (むしろ天使化してる分、少尉より強い圧を感じるんですが!) 男子候補生たちは動揺しながらも、なぜか内心では謎のやる気がみなぎっていた。 その中でも、ひときわ目を燃やしていたのは――福井君だった。 劇画タッチで歯を食いしばり、額に汗をにじませながら、握り拳を突き上げる。 「(ぶっ、ぶくは、……あの天使飴を……絶対ぺろぺろしてやる……!!)」 跳び箱の回転数、走り幅跳び、腕立て伏せ、クライミング……。 すべての種目が、いつもより明らかに記録更新を連発していた。 (素晴らしい……!みんなこんなにも頑張ってる……!) ブロント少尉は満足げに頷く。 「やっぱり、美味しいものは、みんなで分かち合うべきですよね!」 彼女が飴を差し出すと、候補生たちは誰も目を合わせずにそれを受け取った。 候補生たちはそれぞれに、飴細工を大切にポケットへしまい込む者、勇気を出して一口かじる者……。 福井君が、「保存用」「観賞用」「ぺろぺろ用」のいずれかに用いたのかは定かではないが・・・・・・。 夕暮れ、飴細工の屋台にて。 「……やっぱり、あの飴、少尉そのものだったよな……」 飴細工職人のおじさんは、笑いながら新しい飴を練り始めた。 「でもな、たぶんあの嬢ちゃん、ずっと自分じゃなく“芸術”として見てんだろうよ。それがまた、ええんや」 袋の中の“天使飴”が、夕日を浴びてきらりと光った。

さかいきしお

コメント (7)

翡翠よろず
2025/04/25 00:08
Anera

何故舐めない!

2025/04/24 23:56
白雀(White sparrow)

自分の部屋の神棚に飾って毎日拝んでたりして

2025/04/24 22:18
もみ
2025/04/24 22:09
えどちん
2025/04/24 20:11
謎ピカ
2025/04/24 19:39
なおたそ
2025/04/24 18:21

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