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兄妹仲直り
幽魅と一晩を過ごした後の事です。私が家に帰ると、リビングに玄葉がいました。 「・・・ただいま、玄葉」 「お兄・・・お、おかえり」 まだ少し雰囲気がぎこちないですが、玄葉はおずおずと私に近寄ってきてくれました。 「玄葉、昨日はごめんね。許してくれる?」 「うん・・・私こそ、思い切り叩いてごめんなさい・・・」 玄葉が私の左頬に視線を注ぎます。すでに赤みは引いていますし、痛みも残っていません。 「大丈夫、怪我はしてないよ。まあ、もし怪我してたとしても当然の報いって奴だよ。玄葉の裸見ちゃったんだから、はたかれても文句言う資格はないよ」 「み、見られたって言っても背中側だけだったし。それに、お兄がわざと脱衣所に入ってきた訳じゃないのはすぐに分かったのに、それでも恥ずかしくて叩いちゃったのは絶対私がやりすぎだったと思う」 「いやいや、普通は叩くよあんなの。・・・キリがないからさ、ここでもう手打ちにしようよ。お互い悪い所があったって事で、おあいこにしよう」 「・・・うん」 うーん、意外と落ち込んでいるなぁ。裸を見られた事よりも、私を叩いてしまった事がしょんぼりの原因のようです。何とかいつもの調子に戻って欲しいな。 「私は玄葉の裸を見ちゃったのが悪いと思ってるし、玄葉は私を叩いちゃったの気にしてるんだよね。じゃあさ、今度からはこうならないようにしない?」 「こうならないように、って・・・?どうするの、お兄?」 「うーん、そうだなぁ・・・気を付けていても、一緒に暮らしてる以上可能性ゼロにはできないしね。いっそさ、慣れちゃえばいいかも。よければ今度一緒にお風呂入ろうか」 「な、何言い出すの!エッチ、覗き魔、馬鹿、シスコン、スケベ、盗撮犯、変態、女たらし、性犯罪者!」 「痛い痛いごめんごめん」 顔を赤くした玄葉にぺしぺしと胸板を叩かれました。よかった、少しは元の調子が戻ってきたみたいです。安心した私は、『ごめんね、冗談だよ』と言おうと口を開きかけました。 が。 「・・・こ、今度ね」 一足早く玄葉はそう言うと、真っ赤になった顔を伏せながらささっと自分の部屋に素早く戻ってしまいました。後に残された私は、数秒フリーズした後に全身から冷や汗が出るのが分かりました。 「えっ・・・これマズくないかな。約束守るとこの歳になって妹と一緒にお風呂入る事になってアウトだし、今更『うっそぴょーん、冗談でしたー』なんて言おうものなら昨日以上の全力でぶん殴られる未来しか見えないんだけど・・・」 ど、どうしよう・・・まさか玄葉が『今度ね』なんて言ってOKしてくるとは思わなかったから、この展開の場合の対処、何も考えてない・・・。