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いじめと美少女掃除婦と
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「ふふふ、ゴミを見れば、どんな人間かは丸わかりだよ……」 掃除婦の恰好をしたダキニラは、女学院の裏庭でゴミを整理していた。 地味なエプロンを嵌めて、頭に清掃用の頭巾を嵌めていて、狐耳を心持ち隠している。 「ゴミはちゃんと分別してね~」 魔法女学院に潜入できそうな枠は、これぐらいしかなかったのだ。 それでも盗賊であり新聞記者であるダキニラには十分すぎるが。 なにせ、この学園には学生寮も併設されているのだ 名前が書かれてある私物なんかも出されているし、場合によっては衣服(なども)そのまま出されている。 「お嬢様といっても裏では慎みがないのかな・・・」 ダキニラも育ちは良くはないが、そこまで悪くはない。盗賊だけど。 いや、盗賊だからこそ身元の痕跡には留意する。 何せゴミは情報の宝庫なのだから。 ゴミからその人個人の情報はもちろん、所属する組織や社会的階層、交友関係まですべて把握できてしまう。 「つっ、これは……。穏やかじゃないかな」 紙袋の中には、まだ新しい、女学生用の制服一式が含まれていた。 組織内では各種対立があったり、排斥される存在が出てくる。 虐めだろう。 「ブローナ せ・ん・せ・い、に相談だね」 情報収集しながらも手早く掃除婦としての仕事もする。 とそこに。 「すいません……」 消え入りそうな小さな声が掛けられる。 ダキニラは気づいていたが、女学院の生徒がゴミ袋を大量にもって集積所に来ていた。 一人分のごみとしてはやけに大量だ。 「あら、お預かりしますよ」 ダキニラは、設定どおりの掃除婦の年齢にふさわしい声と態度でゴミを受け取る。 そのすきに手早くダキニラは相手の女生徒を観察する。 やけに地味な娘ね。目立たないところに軽いけがをしている。 それに、制服のサイズがあっていない。 さっき捨てられてた制服だったら、たぶんぴったりね。 それより……、こっちを見ないわね。やけに感情を消している。 ダキニラは、その暗い青色の髪の少女が、件のいじめられっ子であることに気づいた。 しかし、同時に。 結構やるわね。お嬢様たちじゃ、魔法使っても歯が立たないんじゃ。 少女の力量をある程度把握していた。 「こりゃあ、絶対怪しいね」 ダキニラは、受け取ったゴミ袋、たぶん青髪の少女が押し付けられたゴミを改めて呟く。 中には怪しげな薬が入っていたらしい包みと、けったいな模様が描かれた紙、赤い波打った長髪が入っていた。