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デートと妹.チョコケーキ
「おまたせした。ここはわれが、学舎の費えを得るために働いていた店でな」 オークの巨漢がエプロンを付けて、大きな両手で大事そうにチョコレートケーキを持ってきた。 「無理を言って朝方厨房を借りて仕込んでいたのだ」 目の前におかれた、武骨な手で作られたチョコレートケーキを前に。 薄いピンク色のドレスを着た、メイドさんこと。 「エルザベータ殿のお口に合えばよいのだがな」 「とっ、とても美味しいですわ」 (このようは、婦女子を誘引しかねない危険物を放っておくわけにはいかない。私が始末をつける) (なんだ。あの娘は……。女が男に胃袋をつかまれてどうする) (はは!!ゴルドンの作るもんは、メシもケーキもうまいけどよ) (まあ……、とてもおいしそうではあるけど。 それにしても、今日は……、14日?何か由来があったような) と、そこへ、給仕がテーブルにすっと皿を置いた。 「どうぞ……」 「うん、我は頼んでおらぬぞ」 ゴルドンの異母妹、グレドーラが答えた。 「いえ、私も……」 異父妹シルビアも首を振る。 「おにいさ、ゴルドン様からです。バレンタインだと」 「ははは!!さみしい妹たちにやさしい兄貴じゃねーか」 思わず笑ってしまったブロントだが。 ギッツ!! キッツ!! ゴルドンのタイプの違う妹二人に睨まれて、首をすくめた。