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異世界吟遊アイドル
「コンサート?」 母の言葉に、シルビアが素っ頓狂な声を上げた。 「ああ。シルビアやゴルドンも、この国のため、子供たちのために頑張っているな。私も一肌脱ごうと思う」 (あんた。このまえプロレスの相手に成りすまして、試合ぶち壊したの忘れたの。ポンコツダークエルフ) とシルビアは、自分も魔法を放ってアーゼリンをゴルドンもろとも眠らせた事を棚に上げて思う、が口には出さない。 「案ずるな。母者は歌の道を歩むもの。自分の道で悪ふざけはしまい」 「?、わたしは、歌う事は大好きだぞ?」 分かっているのか、わかっていないのか、天然は反応を示す母に、シルビアはため息をついた。 当日。 コンサートホールの中に、アーゼリンの少し低いが美しく伸びのある歌声と、見事なリュートの演奏が響き渡る。 『異なる種族 集まる地 色とりどりの 夢と希望 時には争い 時には和 それでも一つ この大地 古き御業と 新たな知 魔動の技とふるき術 自然の御霊と大神と すべてを受け入れ 愛を持て それが われらが ねがうゆめ』 「やはり見事だ……」 「本当……、普段のポンコツぶりからは想像つかないわ」 シルビアは相変わらず母に対してきつかった。