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異世界ロックとロリータと

「おう、シィルちゃん待たせたな!!」 「ちょっと、遅いわよ。こんな格好で待たせて!!」 ハーフエルフの少女が、遅れてやってきたエルフの若者に文句を言う。 (こんな格好、学園の教授たちに見られたら大ごとだわ) 彼女は、少々奇怪な格好、近頃はやっている新しい音楽の、人によっては騒音という、演奏メンバーのような恰好をしていた。 彼女な清楚で、神秘的ともいえる銀色の髪と、わずかに褐色がかかった肌に、その衣装は似合っていると言えるが、 魔術師にて賢者である、普段の彼女を知っている者が見たら、そのイメージのギャップに驚愕することだろう。 この盛り場、魔動機による照明や、映写画像による光に照らされた街の雰囲気には非常に溶け込んではいた。 対して、現れた男のエルフは、露出の多いレザーファッションに、銀製の鎖やアクセサリーを身に着けた、一目で堅気でないとわかる格好をしている。まさか、かれが神秘的で浮世離れしたイメージがある、精霊使い、だと思うものは少ないかもしれない。 「なんか、いつも以上にとんがっているわね」 レザーファッションを普段から愛用する男のエルフ、ブロントだが今日はやけに露出が高く要らん装飾が多い。 「いけてんべ!!」 「しょうがないわね……」 ハーフエルフ、シルビアは、あきらめた口調でつぶやいた。 「ほんじゃ、こっからすぐ近くだから、あげていくべ!!」 新進気鋭の吟遊詩人のグループが、この繁華街の地下で、夜ごとに怪しげな公演を行っているらしい。 王都の、特に若者の間でにかなりの賛同者(ファン)がいるらしかった。 その歌詞に、世間一般的ではない言葉が、悪魔だの邪悪だの、が含まれているとの情報が入っていた。 吟遊詩人(バード)は、自由奔放なものが多いので、それも表現の一環とも言えるが……。 『魔族』のフレーズも入っていた。 魔族は、この国の構成する各種族、各部族の一員ではないのだ。 むしろ、一員となることを明確に拒んだもの達が、まとまって国を出た。 そして、自分たちを魔族と吹聴した。 確かに、一般的な人族とは大きく異なる容姿をしたものも多かったが。 実は人間と見分けがつかない者もいれば、動物そのもの、魔物や悪魔そっくりな者もいるらしいが……。 根本的に王国と相いれなかったのは、むしろその思想だ。 見た目の差異に関わらず、彼らは共通して、王国に対立して敵対する。 ただ、人族、この国を構成する多種族他部族をすべて含むが、一部の者たちは魔族に共感、賛同するものもいるらしい。 王都の、特に若い者たちには多いとも聞く。 それで、今回仲間内では若く、見た目もそこまで目立たない、シルビアとブロントが潜入することとなった。 「もう~、ブロント、本当にこんな格好しないと入れないの?」 ハーフエルフの魔術師は、普段の簡素で緩やかなローブ姿と違い、肌の露出が多い上に余計な装飾が目立つ格好に、戸惑いを隠せないようだ。 「シィルちゃん、その格好かなり似合ってるべ。そのまま、地下世界の姫になれるべ」 「もっ、もう!!馬鹿言ってないで行くわよ」 憎まれ口をいって先に立って進みだすが、よく見ると口元がほころんでいる。 何気に自分でもその格好が気に入っているようだった。

さかいきしお

コメント (2)

binbin yea
2023年11月21日 13時57分

さかいきしお

2023年11月21日 14時03分

bonkotu3
2023年11月21日 08時49分

さかいきしお

2023年11月21日 09時14分

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