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ポンコツ女エルフ教師
森の中、ちょっとした広場で、黒板を前に人だかりがある。 どうやら、学校的に何かを教えている場所らしい。 教師役らしいダークエルフの若く見える女性が、黒板の前で教鞭を持っている 「このように、エルフと人間は、お互いに生殖可能で、その子供であるハーフエルフも子供を作れる。 非常に近い生物と考えられる」 黒板に、雑に、人間と、エルフらしい絵が描かれている。 「せんせ~、オークやトロールは?」 エルフの子供が手を挙げて質問する。 女の子だ。 「かれらは、エルフや人間とは、体の大きさ、角や牙といった特徴で、見た目がかなり違うが、 生殖可能な点はハーフエルフと同じだ。 それに女性の場合は、男性ほど種族的特徴が強くない。 男女差が強く出ているだけで、生物としての根源は同等と考えられる」 普段の天然ぶりはどこに行ったのか、まじめにおかしな授業をしているようだ。 「せんせ~」 また子供の手が上がる。 今度は、こしゃまっくれた感じがする男の子だ。 「そもそも、男女の差というのがわかりません~」 「むっ、そうだな。そこから理解が必要だな……」 ダークエルフは少し面食らったが、律儀に答える。 「いずれは、学ばないといけないことだ。実せ……」 「何をやっているんですか!!」 そこに、ハーフエルフの魔術師が乱入してきた。 「そろそろ、長老たちとの面談が始まるのにいないと思ったら!! お母様!!子供達に一体何を教えようというんですか!!」 「……、子供たちが正しい知識を身に着けないと、種族間のたいり」 「セージ(賢者)の修行もしていないお母様が何を教えるっていうんですか!!」 怒りに気おされながらも、マイペースに言葉をつづけようとする母を、食い気味にさえぎるハーフエルフ。 「……わたしは、バード(吟遊詩人)だし、いろんな種族と子供を作っ……」 「黙れポンコツ!!」 ハーフエルフは、杖をふるうと、子供たちの前でいらんことを言おうとする母の口をふさぐ。 「みんな、このおばさんは、頭がおかしいから信じちゃだめよ!!」 ハーフエルフはさらに杖をふるうと、空中に浮かんだ母を引っ張って青空教室を出て行った。