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日本橋といちご線の秘密
※東京、日本橋と国道一号線のつもり。千疋屋は行っことありません。 「ここが東海道の起点となっている日本橋です。 東海道だけではなく、ここ日本橋は江戸時代から、日本の各地方に伸びる街道の起点とみなされていました」 世話役の富士見二等軍曹が、ブロント少尉以下の面々に説明する。 「なるほど、それで、いちご線はどこですか」 「はっ?」 「私聞きました、日本橋はいちご線の起点だって。昔は別の名前だったけど、いちご線に変わったって。 なんか、キュートでおいしそうな名前ですね。苺屋さんや苺畑がたくさん広がっているんでしょうか」 「……」 「全員、その場で腕立て50回。はじめ」 富士見2等軍曹以下、全員がいきなり腕立てを初めたので、きょとんとするブロント少尉。 釣られて腕立てを始めるブロント少尉。 いち早く腕立てを終えた富士見軍曹は、少尉がすぐ後に終えるのを待って、 鞄をひったくると、なぜか入っている苺のパックを取り出す。 そして、有無を言わさず、あんぐりと空いているブロント少尉の口にでっかいいちごを突っ込んだ 「苺線ではなく、国道一号線です。東海道は一号線に名前を変えたのです。 少尉殿に正しい知識を伝達できなかった事を謝罪いたします。小官以下懲罰としてプッシュアップを課しました次第です」 ブロント少尉も思わず付き合ったのはスルーだ。 「むご……、ほっ、ほうなの……」 でっかい苺をなんとか口の中で飲み込みながら答えるブロント少尉。 「……、いちご、美味しいですか?」 「ええ、とっても……」 「それはよろしいかったですね」 そこで富士見2等軍曹は一息つくと。 「総員注視。本日の午後栄養食を、ブロント少尉がご提供してくださるとのことだ。 該当するフルーツパーラは、この地域どころか日本一の規模と歴史を誇る古強者かつ最強の相手だ。 敵情視察も兼ねるので、各員一層奮起、心してかかれ!!」 意訳:一人だけ苺くってうまかったか?この馬鹿垂れ少尉。お前みたいなのが上だと大変だぜ。 俺たちにも苺おごれ。もちろん、一番上等な水菓子(果物)屋でな!! 「ちょっ、そっ、それってもしかして千びき、むご!!」 ブロント少尉も年頃の娘だ。フルーツパーラのランク付けぐらい知っている。 慌てて、口を挟もうとする少尉の口に、2等軍曹が残りの苺を突っ込んだ。 小さく歓声を上げながら苺パフェを食べる、自分より年下の部下たちを見ながら 「はあ、まあしょうがないか。みんな頑張ってるもんな。とんだ苺線ね」 「部下思いですね。ブロント少尉。少し見直しました」 かすかに微笑みながらパフェを食べる、富士見二等軍曹は、伝票をすっと自分のポケットの中に隠した。