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ひよこスレイヤー
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「本当に、やるクマか。ロック鳥の卵を取るなんて無茶クマよ」 大きな熊が、背中に少女を乗せながら山道を歩いている。 顔立ちが幾分優しく見えるから、メスらしい。 なぜかクマがしゃべっているが。 「あいつらはひよこでも、ぷーにゃんより大きいクマよ。ひよこでも卵を守っているクマよ」 「そっか~。残念……。はちみつ入りの甘い卵焼きを作ろうと思ったのに~」 「やるクマ!!」 突然、大きな熊の姿がポンと掻き消えて、可愛らしいクマ耳を付けた少女になる。 「わ~、大きいね。あれがロック鳥かあ~」 切り立った崖の前に、大きな黄色い鳥がたたずんでいる。 「ちっ、違うクマ!!あれはまだひよこクマ!!」 大きなひよこが飛び掛かってくると、それに率いられるように小さなひよこたちも寄ってくる。 大小さまざまなひよこ達に、突っつかれる二人。 その時!! 森の木々をなぎ倒すような轟音と、爆風のような突風が吹きすさぶ。 「ひい~!!親に見つかったクマ!!」 「逃げるよ!!ぷーにゃん!!」 脱兎のごとく逃げ出す、ドワーフ娘と熊っ娘。 「だからやめようって言ったクマ~」 「言ってないよ!!」 「私も、空を飛ぶ相手には勝てないな~」 勝てないだけである。負けてない。 「今回は無駄足だっかな」 「そんなことないクマよ」 熊娘こと、ぷーにゃんは、何処からともなく大きな二つの卵を取り出した。 (ぷーにゃん、魔獣狩人の才能があるね) 幸せそうに卵焼きを食べる熊娘を見てドワーフ娘は同類だと確信したのだった。