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戦乙女と光の槍

「ちっ、こんな街中まで魔族やデーモンが出るなんてよ。この国はどうなっちまうんだ!?」 路地裏を進むブロントの、前後から人型の魔族、獣型のデーモン達が現れる。 ブロントは、剣を構えつつ魔法を詠唱に入る。 街中で攻撃魔法を使う事は基本禁じられているが、自衛の場合や止むを得ない場合は配慮はされる。 それに、街中で魔族やデーモンが現れたのだ。 放っておけない。 冒険者が、グレーゾーンに属する存在と思われながらも、武装を含めて数々の特権を得ているのは、いざ事が起こったときに、予備兵力として市民を守り、闘いの前線に立つことを期待されているからだ。 『美しき乙女、猛き気高き戦乙女、勇者を死地へと誘う死神よ。  契りによりて、我が敵を打ち倒せ!!」   ブロントの精霊魔法の詠唱により、彼の背後に、甲冑と槍で武装した、美しくも猛々しい戦乙女の幻覚が浮かび上がった。 『戦乙女の槍!!(ヴァルキリージャビリン!!)」 ブロントが振り下ろした左手と共に、光輝く魔法の槍が放たれる。 4条の光の槍は、前後から急速に間合いを詰めようとしていたデーモンたちに狙い過たず突き刺さる。 敵は一体をのこして崩れ落ちた。 「魔族のねーちゃん?俺は昼間っから女とやる趣味はねーんだ。どうする!?」 一体残っていた、明らかに人間の女性と類似した容姿の女魔族に問いかける。 「ふふふ、戦乙女の力を自在に借りられるなんてね。 アーゼリン様やシルビアにちょっかい掛けるだけの半端者かと思っていたけど。 なかなかやるようね。 ここは引いてあげる」 女魔族は魔法を唱えると、溶け込むように薄闇の路地裏に消えた。 「あいつはやべーな……」 手加減したつもりはなった。 だが、あの女魔族はブロントの魔法に抵抗した。 ヴァルキリージャビリン、戦乙女の力を借りて敵単体を打つ強力な攻撃魔法である。 例え抵抗に成功したとしても、致命傷にならないぐらいに威力が弱まるだけで、結構なダメージを受けるはずなのだが。 あの女悪魔は多少の傷は負ったようだが平然としていた。 放たれた攻撃魔法は躱すわすことはできない。 ただ自分の精神力で耐えるのみだ。 相手が精神力で作り出した魔法なら、自分の精神力の強さで抗うことができる理屈だ。 そして、抵抗された魔法は威力が減じる。 鍛えられた心身と技量で、傷を和らげることもできて、場合によっては無傷ともなりえる。 だが、そのためには。 「あの悪魔ちゃんは、俺より強いってこった……」 ブロントは、戦慄を覚えながら呟いた。

さかいきしお

コメント (1)

bonkotu3
2023年12月04日 08時50分

さかいきしお

2023年12月04日 08時51分

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