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美少女軍人、青春と衝動に目覚める
夜の士官学校女子教官寮。 節電モードで照明がぼんやりとした共用室の片隅に、一人の少女が正座していた。 軍服のまま、食い入るようにテレビを見つめるその姿──金髪をポニーテールに結った、美しい少女少尉。 名をアンジェラ・ミカエラ・ブロント。 「ううっ……なんて……なんて熱いのっ……!」 テレビの画面では、熱血教師と、荒れた生活を送っていた不良生徒たちが、ラグビーというスポーツを通じてぶつかり、殴り合い、涙しながらも信頼を築いていた。 ──「このパス、お前が受け取れぇえええっ!」 ──「先生……オレ……変わりたいんスよ!!」 「青春って……爆発だね!? いや、違う、これは……感動のトライ……!」 画面の中で、泥まみれの彼らが抱き合い、夕日に向かって走るシーン。 「……これ、部活だよね……? わたしも、やるべきなんじゃ……?」 ブロント少尉の瞳が、カッと見開かれる。 そのとき、彼女の中で何かが弾けた。 翌日。校庭。 ブロント少尉が、ブルマ姿で現れた。 体操服は白地に紺のライン。ハイレグタイプの紺ブルマ。昭和の女学生そのものの姿。 部員たちの視線が刺さる。が、本人は気にしない。 その女学生風体操着姿は、軍の階級章付きリストバンドと合わさることで、得も言われぬ圧を放っていた。 「うむ。今日はラグビー部に臨時所属する。なぜならば、それが青春だからだッ!!」 男子部員たちは、唖然としていた。 「なにこの人……マジで来たのか」 「っていうかその格好……軍服より威圧的かも……」 「え、今日、顧問と部長いないから、軽いトレでいいって……」 「各自ランニングとか聞いたのに……」 ざわつく部員たち。しかし、美少女少尉がブルマ姿で真剣な顔で仁王立ちしている。 少尉はキリッとした顔で、そんな空気など意にも介さず、ボールを手に取る。 「私はブロント少尉だ!!」(誰もが見ればわかる) 堂々と名乗った少尉は続けた。 「緊急事態につき、私が臨時に指揮を執るッ!! だがラグビーは危険が伴う……勝手な試合はできない!! ──ならば、ランニングだ!! ラグビーボールを抱えて……校外でなッ!!」 「えぇ……校外……?」 ざわめく部員たち。 「さあ、青春を体で感じようじゃないかッ!!」 ブルマ姿でのたまうブロント少尉。 ラグビーボールを抱え、美少女スマイルで走り出す。 その後ろに続く部員たち。 とんでもなく美脚が躍動している (まぁ、接触なきゃ問題ないか……) (見るだけなら……むしろ眼福だな……) そう思っていた──最初は。 しかし 「走るだけでは訓練にならん!!高度な地形対応能力こそ、未来のフィールド戦術だッ!!」 言い終えると同時に、ブロント少尉の動きが変わった。 ──跳んだ。 ──飛び上がった。 まるでジャッキーチェンか忍者のように、ガードレールを利用し塀を駆け、屋根を跳び、電柱をけり返ってくる。 掛け声とともに、彼女の体操服が風にはためき、おへそがチラリと見える。 紺色ブルマの腿筋が躍動し、スニーカーが屋根瓦を軽やかに蹴るたび、次の瞬間にはまるで忍者のように民家から民家へと飛び移っていく。 「ちょ、あの人! 屋根に乗ってる!?」 「なんでこっちにボールが──!?」 風を裂いて飛ぶラグビーボールが、部員たちを次々に打ち倒していく。 「友情パスは時に鉄拳より強い!! 君たち、これが青春の機動訓練だよッ!!」 屋根から街路樹へ。街路樹からブロック塀へ。電柱を蹴って跳ねたかと思えば、標識を一回転しながら着地してまた投げる。 「ほらほら、走って走って! 感じて、熱さをッッッ!!」 ブルマ姿でまさかのパルクール。 女子らしさなどどこかへ置き去りにしながら、動きはひたすら鋭く、正確で、狂気的。 あまりの俊敏さに、男子部員たちはただただ棒立ちで撃沈されていく。 最後のひとりが倒れたとき、夕陽が落ち始めていた。 風が止み、静まり返る中。 ブロント少尉は胸にラグビーボールを抱え、静かに立っていた。 「……これぞ、青春ドラマだね!! 汗と涙と友情の結晶!! 感動だよ!!」 まるで自分が、ドラマの主人公そのものだと言わんばかりに。 夕日に染まるその姿は、美しさと暑苦しさと、無自覚なポンコツの奇跡的融合。 そのとき、背後から近づく影──富士見二等軍曹。 パンッッ!! 音が響き、ブロント少尉のお尻が張り飛ばされた。 「ぴぃっ!? ちょ、ちょっとお尻はやめてって言ったのにぃっ……!」 富士見軍曹の正義の鉄拳(尻ぺち)が、少尉のブルマ尻に炸裂。 「青春バカにも程があるんですけど!!」 「い、痛い……青春って……こんなにしみるんだね……」 ブルマのお尻を押さえ、ほっぺを赤らめてしゃがみ込むブロント少尉。 放課後のマネージャーのような儚げな表情のブルマ少尉の姿に、倒れていた男子部員たちは、無言で立ち上がった。 「……青春って、いいな……」 「オレ、ラグビー、続けてみる……」 彼らはなぜか心が洗われたような顔をしていた。 汗と傷と笑顔と、ちょっとした羞恥と。 その日の夕空は、誰の記憶よりも真っ赤だった。 それは、美少女のブルマ姿が空に描いた、青春の火柱だったのかもしれない。