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残りのわらじはどこに履く?
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「予備衛兵!!ダキニラであります!!」 衛兵の制服を羽織った狐耳の少女が敬礼する 「……、ニータ、あんた”犬”だったんだね……」 リリスの言葉に周りにいた衛兵たちが、ちらりと咎める視線を向けるが。 「あはは、お狐さんだけどね」 リリスの揶揄も何のその。ダキニラは、平然としたまま。 「あたし、冒険者としても登録してるからね。たまにお仕事回ってくるんだ」 (神官様で、盗賊で、冒険者で、狐で”犬”ね。) 微妙な反応を見せるリリスにダキニラは狐耳をピコピコ動かしながら続ける。 「”堅気”の仕事、いつもあるとは限らないからね。助かってるよ?」 (何足、靴持ってるんだ。足たんねーぞ。どこに履くんだ?耳か? 尻尾か?) 「リリスちゃんも登録する?剣がつかえ」 「あたいに首輪をはめろと?」 一瞬で空気が変わったリリスに、近くにいたダキニラだけではなく、近くにいた衛兵たちさえも凍り付く。 勝手に写真を撮って、ひっぱたかれた時以上の、明確な怒気を憎悪を感じ取って、さしものダキニラも怯えを見せる。 「あっ、う……ん、まあ、やだっていう人はいるよね……」 「ふん……」 リリスは鼻を鳴らすと身支度を始める。 ものすごく機嫌が悪そうなリリスだが。 「ニータ、あんた、その格好は似合ってないよ。ぶん殴りそうになるからやめときな……」 それでもダキニラにちらりと視線をやると、小さな声で続ける。 「あたいと出かけるときは、いつもの格好にしなよ」 「はあ~」 珍しく、落ち込んだダキニラだった。 とそこに、 「ため息は、幸運は逃げますぜ。巫女様」 どこかの貴族に仕えるらしき執事服の男、ただし、いささか雰囲気が悪い中年が話しかけてきた。