悪意なき賞賛
「ねえ、あなたのフルートとっても良かったよ!!」 派手なヘアスタイルの女学生が、ハーフエルフのフルート奏者に花束を手渡している。 「とっても自由で、広々として、心の叫びって感じがした!!」 「ボーカルじゃねーよ・・・・・・」 「声じゃなくても、演奏でもわかるよ!!すごかった!!」 「む?、あの女学生は?」 その様子をみて、貴族の男が傍らの執事を見やる。 「へい。隣国の、辺境伯の御令嬢でさあ」 貴族は、上流階級の付き合いで見かけた記憶があり、 執事はどうも裏社会の人間らしく、情報通だ。 「・・・・・・、どうなる?」 貴族は、執事がフルート奏者の娘に、極度の怯えを見せていたのを思い返した。 関わって生きている者はいない、と執事は言った。 「……、只のファンなら大丈夫でしょうが……」 辺境伯令嬢は中々熱狂的なようだ。 「旦那は関わりにならねえで。何とかなりまさあ。お守りは付いてますぜ」 執事は、女学生を少し離れた位置から見守る、中性的なエルフに気が付いていた。