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コロッケ
「揚がる香り、恋の予感」 「はーい、みんな!今日はね、コロッケの魅力を語り尽くすわよ!」 エルフの女戦士、クロッカが元気いっぱいに宣言した。彼女は森の奥深くから現れた美しいエルフだが、最近は料理の腕前に磨きをかけている。そして、今日のテーマは――そう、コロッケ。 「クロッカ、また食べ物の話かよ。お前、戦士なんだからもっと戦いの話とかしろよ。」 ドワーフの相棒、アルフォが軽く突っ込みを入れる。 「冗談、顔だけにしろよ。戦いもいいけど、コロッケは愛だよ。恋と一緒だな。」 クロッカは全く気にすることなく、軽やかに話を続ける。 「まず、みんな、コロッケの基本はね、やっぱりじゃがいもよ。じゃがいもはホクホクで、でもクリーミーな感じが大事なの。適度に茹でたら、熱いうちに潰すのがポイントよ!」 クロッカはキラキラした目で説明する。彼女の手には、すでに大きな鍋とじゃがいもが用意されていた。 「じゃがいもを潰すときはね、ちょっとだけ牛乳を入れると滑らかになるの。これ、私の秘密のテクニックよ。」 「秘密でも何でもないだろ。それ、誰でも知ってるって。」 アルフォが呆れ顔で突っ込む。 「冗談、顔だけにしろよ。牛乳は魔法みたいなものだよ。恋と一緒だな。」 クロッカはそう言いながら、じゃがいもを潰し続けた。 「次は具材よ!玉ねぎとひき肉を使うんだけど、玉ねぎは細かく刻んで、透き通るまで炒めるのがポイント。これが甘さを引き出して、コロッケ全体の味を引き締めるのよ。」 クロッカは手際よく玉ねぎを刻み、フライパンで炒め始めた。 「ひき肉も同じように炒めるんだけど、脂が多いときは少しだけキッチンペーパーで拭き取るのがコツ。余分な脂がない方が、じゃがいもとよく絡むのよ。」 「お前、ほんとに戦士か?」 アルフォが小声でつぶやいたが、クロッカは気にせず説明を続ける。 「炒めた玉ねぎとひき肉をじゃがいもに混ぜて、塩コショウで味を調えるのよ。ここで大事なのは、しっかり混ぜること!全部が均一に混ざるようにね。」 クロッカは力強く混ぜながら、まるで戦場で剣を振るうかのように真剣な表情をしていた。 「さあ、いよいよ形を整えるわよ。コロッケの形はね、円盤状が一番美味しく感じるわ。でも、これは好みだから、好きな形にしていいのよ。」 「戦士が形を気にするってどうなんだ?」 アルフォが再び突っ込むが、クロッカは微笑みながら答えた。 「形は愛よ。恋と一緒だな。」 「さあ、衣をつけるわよ!まずは小麦粉を薄くまぶして、それから卵にくぐらせる。最後にパン粉をたっぷりとつけるのがポイントよ。パン粉は細かいのと粗いのを混ぜると、サクサク感が増すの。」 「お前の戦い方と同じくらい緻密だな。」 アルフォが冗談めかして言うと、クロッカは笑顔でうなずいた。 「そして、いよいよ揚げるのよ!油は180度に熱して、コロッケを優しく入れる。じゅわっと揚がる音、これがまたたまらないのよね。」 クロッカは熱心にコロッケを油に入れ、黄金色に揚がるまでじっと見守った。 「揚げたてを頬張る瞬間が最高なの。外はカリッ、中はホクホク。ああ、コロッケって本当に幸せを感じさせてくれる食べ物だわ。」 彼女は自分で作ったコロッケを一口食べて、満足そうに微笑んだ。 「ほら、アルフォも食べてみて!これが私の愛よ。」 「コロッケを愛と呼ぶのはお前だけだろ。でも、まあ美味そうだな。」 アルフォはそう言いながら、クロッカの作ったコロッケを口に運んだ。 空は澄みわたり、風は優しく草木を撫でる。コロッケを揚げる音が、まるで遠い過去の思い出を呼び起こすかのように、静かに響き渡る。太陽はまだ高く、雲はまばらに漂い、その隙間から射し込む光が地上を黄金色に染める。大地の恵みが形となり、揚がったコロッケは、自然と人々の繋がりを象徴する存在となり得たのだ。クロッカとアルフォ、その瞬間、何も言わずとも分かち合った。彼らの周りには、温かな風がそっと包み込み、次なる冒険への予感を秘めた静寂が広がっていた。 (完)