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蠍座の女
そこには、たまたま通りかかっただけでした。 わたしは彼と二人、車で夜道を走っていました。デートの帰りで、彼が家まで送ってくれている途中でした。 郊外の道を走っていると、その建物の前に大きなトラックが止まっていました。 見通しが悪いので、彼が車の速度を落とした時、わたしはそれを見てしまったのです。 柵の向こう、たしか、どこかのメーカーさんの工場だったと思うのですが、なにか怪しい集団がうろうろしています。 「ちょっと、見て!」 わたしが彼にそう言った時でした。 キキキー!彼が急ブレーキを踏みました。彼もうわ!と驚いた声を上げています。 止まった車の中から前を見ると、その、怪しい集団のうちの何人かが道に立っていました。怪しい集団は車の前からどこうともせずに、むしろこちらを見ています。 「ちょっと!危ないじゃないか!」 窓を開けて彼が叫びます。が、その時、ライトにそれが照らし出されました。怪しい集団が、何かをトラックに運び込もうとしています。 「ねえ、なんかやばくない?この人たち」 わたしがそういうのと、それが現れるのが同時ぐらいでした。怪しい集団の中から、異様なものが現れました。そしていつの間にか、車が集団に囲まれています。 唐突に、車のドアがこじ開けられて、わたしと彼はその集団の前に引き出されました。 「何するんだ!」 「ちょっと、なんなんですか」 異様ないでたちの女たちに体を押さえられ、車の前に連れていかれると、その前からその「異様なもの」が姿を現しました。 「ひ!」わたしは悲鳴を上げました。それは、なにか虫のような、機械のような、体は女の人に見えるのですが、その後ろに大きなその虫様のものが付いています。そしてそれには大きな尻尾のようなものが付いていました。 「見られたからには、帰すわけにはいかぬ」それは、そう言いました。 「見た、って、いったい何をしてるんだ!」 彼が言い返します。 「おまえたちが知る必要はない」 一瞬の出来事でした。「それ」の尻尾がシュッ!と動き、先端にある針が彼を捉えます。 「うわ!」 (サソリ?) そう思ったもつかの間、彼が膝から崩れ落ちます。 「きゃああああ!」私は悲鳴を上げることしかできませんでした。崩れ落ちた彼は・・・・ 彼はそのまま泡となり、溶けてしまったのです。 脚を、生暖かいものが伝います。女たちが押さえているせいで立ってはいましたが、わたしは完全に腰が抜けてしまいました。 そして「それ」が今度はこっちを向きます。 震えが、止まりません。 「それ」がわたしに近づいてきます。そして、尻尾ではなく手を伸ばすと、わたしの顔を、自分の方に向けさせました。 「悪くないわね。連れていけ」 「それ」は女たちにそう指示します。わたしはトラックに乗せられました。 そして・・・・ ワタシは生まれ変わった。 改造手術とくだらない人間の意識を残さないよう洗脳をして頂き、 レディ・スコルピオ様直属の戦闘員の一員に加えて頂けることになったのだ。 レディ・スコルピオ様に従い特殊作戦に参加するのが今から楽しみだ。 そんなわけで、サソリ女です。 サソリ女と言えば、どっちかというと女囚サソリみたいなのかなと思ったんですが、 なんかうまいことイメージがわかず(苦笑