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風刺画・新聞・狐っ娘
「おう、ダキニラ。すっかり休めたようだな」 編集室に入ってきたダキニラに、ギルドマスターが微妙な顔をしながらねぎらう。 「おはよ。あたしには、幸運の女神さまが付いているからね。どうってことないよ」 ここは、新聞社に偽装した盗賊ギルドの一室。 幸運神の声が聴ける神官にして、盗賊という変わり種で希少な存在、ダキニラは新聞記者の肩書を持っている。 「やつら、お前さんのおかげで、一網打尽にできたぞ。といっても……、背後はそこまで洗えなかった。」 ダキニラや、ギルドマスターは、サーカス団の背後にいずれかの軍がかかわっていることに感づいていたが、調査には限度があった。 犯罪者とスパイの隠れ蓑だったサーカス団は、警察と王軍、国軍に引き渡された。 王軍が出てくる時点で普通ではないのだが。 「まあ、いずれにせよ、違法な薬物を運び込んで、子供たちを売り飛ばしていたのは確かだ。 捕まえられたのは、お前のおかげだよ」 編集長が、読んでいた他社の新聞をダキニラに投げてよこす。 「すっぱ抜かれちまったな。お前さん、名前を売っちまったかもしれねえ。変装は素人にはわからねーだろうけど」 「あによ、あたし、こんな年増じゃないよ」 掛かれていた風刺画の女密偵に、ダキニラは吹き出しながら怒るふりをした。