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氷の棺
「なっ、何事だ!!」 巨大な影が空を舞い、炎を噴出し、家々を踏みつけ、破壊をもたらしている。 「あれは……、まさか、ドラゴン!?」 この国は、さまざまな種族、部族が連合して作られている。 その中には、ドラゴンと縁が深い者もおおい。 だが、竜の中にも種類が個体差があって、人類との共存を望まないものもいれば、 野獣と変わらぬ知性しか持たない者もいる。 暴れまわる破壊の権化から、逃げ延びようとする人々の中に一人。 「おっ、おい、危ないぞ!!」 王都の治安を守る衛兵隊も、人々を抑えるだけで手いっぱいだ。 そんな中、革鎧に身を包んだ銀髪の美女。ダークエルフの美女が一人すっと進み出た。 『精霊王、フェンリルよ。かのものを、汝が暖かくも冷たき棺に迎え入れよ』 ダークエルフの美女は、暴れまわるドラゴンを前に何事かを唱える。 『アイスコフィン(氷の棺)』 ドラゴンは、次の瞬間、巨大な氷の棺の中に閉じこめれていた。 眠っているよう、蛇やトカゲが冬眠しているように見えなくもない。 「見事な魔法だ……。ドラゴンを無傷で抑えるとは」 その様子を見ていた、若き女王は畏敬の念を抑えきれず呟いた。