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幽冥を宿す竜角に彩られた深淵の舞踏――忘れ去られし竜騎士の追想

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2025年02月27日 16時10分
使用モデル名:CustomModel(その他)
対象年齢:全年齢
スタイル:リアル
参加お題:

私の名はラウヴァリス。昔は竜騎士だったんだ。もっとも、いまやすっかり引退して剣も鉤爪も錆びつきかけているけどね。相棒の子竜MAXとは数々の冒険をしてきた。その頃はパーティなんか組まず、二人(正確には一人と一匹だけど)で剣とブレスだけを頼りに危険地帯を縦横無尽に駆け抜けたものさ。 「おいラウヴァリス、そのジャンクフードばかり食べてると体が鈍るぞ」  通りがかりの冒険者にそう説教されて、つい口をとがらせた。「ジャンクフードは栄養だよ。恋と一緒だな」なんて思わず言い返してしまったけど、相手は目を白黒させて固まっていたっけ。だって本当にそう思っているんだから仕方ないじゃない。私のMAXも小さな頭をかしげながら「キュルル」と首を振っていた。 そうそう、MAXのブレスは回復効果があるんだ。つまり多少無茶な戦いができちゃうわけ。普通の冒険者なら「回復役がいない!」って慌てふためく場面でも、私の場合は「MAXがいれば大丈夫じゃん?」となる。だからソリストでも戦い抜ける──そんな風に私は信じていた。 さんざん被弾してHPが減っていると、うっかり他の冒険者にケアルをもらってしまうこともある。相手は親切心から回復魔法をかけてくれるんだけど、私からすれば「あれ? MAXがいるのにゴメンね?」って、ちょっと複雑な気分になるんだ。 「おい、ラウヴァリス。せっかくケアルしてやったのにお礼もないのか?」 「え……? あ、ごめん! ありがとう。でもほらMAXにも立派なブレスがあるし、気にしないでいいんだってば」  そんなすれ違いを何度も何度も繰り返すうちに、「冗談、顔だけにしろよ」なんて怒られてしまうこともしょっちゅうあった。でも悪気はないんだ。MAXと私には、私たちなりのペースがあるからね。 竜騎士専用のアーティファクト──胸元に竜の紋章が刻まれた鎧や、自在に魔力を通せる槍──あれを手に入れたいと願っていたこともあった。私とMAXの歴戦の足跡を形にして残したかったからだ。けれど、やっぱりソリストでは分不相応だったみたい。強敵を撃破して迷いの森を突破し、あと少しでその装備が手に入りそうだと思ったところで、あえなく撃沈。あのときは意気消沈して「ヘデュ!」なんて意味不明な声をあげてごまかすしかなかったな。まあ、今思うとちょっと恥ずかしい姿だったけど、それも私らしい思い出だ。 そんな私も今は牧場で働いている。立派な家に住む余裕なんてないから、馬小屋の一角に毛布を敷いて暮らしているんだ。夜に馬たちのいななきが聞こえると、まるで昔の旅先の野営みたいで逆に落ち着く。おかげでMAXも「キュルル」と散歩気分で馬小屋を出入りしては、仲良くなった子馬と一緒に草をついばんでいるんだから可愛いものだ。けれど、この牧場で働くようになって朝から晩まで馬の世話づくしで、珍妙な事件が絶えないんだよね。 「くそっ、また馬が騒いでいる! ラウヴァリス、あんた何をした!?」 「え、別になにも……あ、いや、馬にMAXのブレスを試しちゃったんだ。少しは走りが楽になるかと思ったから」 「そりゃ馬も驚くに決まってるだろうが!」  あわてふためく牧場長に怒られてしまったけど、私はすかさず笑って取り繕う。「でも、MAXのブレスは癒やしだよ。恋と一緒だな」──そのときの牧場長の呆れた顔ときたら、今でも目に浮かぶよ。 ソリストでいる時は孤独を好んでいたけれど、こうして他人と共に毎日を過ごすのも案外悪くない。馬たちの足音に混じって、私もまだ走れるんじゃないか……なんて思わせてくれるんだから。竜騎士としての誇りは捨てられないけど、こんな生活もまたひとつの冒険じゃないかなって思うんだ。 ロンフォールの森は「迷いの森」と呼ばれているけれど、地元民なら迷うことはない。私だってかつては、森の樹木の配置や獣道の向き全部を脳裏に焼き付けていた。当時、竜騎士だった私は朝日が昇るより前に森を抜け、夕刻にはMAXと共にダンジョンへ向かう──そんな生活を繰り返してきた。もう十年以上も帰っていないから、いまは牧場の匂いにすっかり慣れてしまったけど、どこかでまた竜騎士としての血が騒いでいるのを感じるんだ。 「ねぇMAX、今度ロンフォールに帰ってみる? それとも、もう少しこの牧場で働いてる?」MAXは尻尾を左右に揺らして、まるで「どっちでもいいよ」と言わんばかりにこちらを見返した。思わず吹き出してしまう。こうやって私のわがままにいつも付き合ってくれる相棒がいるから、世界はこんなにも愉快なんだ。アーティファクトにもう一度挑むのも悪くないし、このまま牧場暮らしを満喫するのも悪くない。そう思うと、今日も霧の中に包まれた草原がやけに輝いて見えるんだよね。 夜の帳がまだ薄明の空を残しながら、白金の雲海が遥か頭上に揺らめいております。時折吹き抜ける風は、どこか海鳴りにも似た淡い調べを帯び、木々の梢をそっと撫でつつ通り過ぎていきます。遠く連なる山脈の稜線は月光を縁取ることなく、ただ静かに大地の境界を描いているだけ。旅人の足跡と竜の吐息は、過ぎ去った日々の記憶をたぐり寄せながら、今まさに新たな道へ向かおうとしているのです。そう、ラウヴァリスとMAXの物語はまだ終わりを知らぬまま、薄闇に溶けこんで消えていくようにも見え、またいつか陽光の中から姿を現すのでございましょう。彼女たちの歩みこそ、永遠に続く竜騎士の夢なのです。

コメント (1)

Jutaro009
2025/02/28 00:38

Epimētheus

2025/02/28 02:27

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いいねコメントありがとうございます。忙しくなって活動を縮小しています。返せなかったらすみません。

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