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月光に戯(たわむ)れる耳の謳歌――遡光(そこう)する白銀の予感

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2025年02月25日 16時05分
対象年齢:全年齢
スタイル:リアル
デイリー入賞 147
参加お題:

エルフの集落にほど近い、緑豊かなうさぎ牧場で生まれ育ったアヤミは、小さな頃から何故だかうさぎに好かれる不思議な体質だった。ある朝、うさぎ小屋の掃除をしていると、牧場を管理する父・ダイスケが目を丸くして叫ぶ。 「おいアヤミ、うさぎたちが勝手に整列してるじゃないか。まるで行進みたいだな」 「まあ、うさぎは意外性だよ。恋と一緒だな」  アヤミは悪びれもせずにそう呟(つぶや)くと、まるで指揮者のようにひらりと手を振り、うさぎたちをひょこひょこと踊らせはじめる。ダイスケは驚いたような顔をしつつ、「冗談、顔だけにしろよ」と苦笑いしていた。 その牧場にはアヤミの弟・ミヤビもいる。ミヤビは父の指導を受けてトップうさぎ騎手を目指す。ある日、弟のトレーニングの様子を眺めていると、ミヤビが汗を拭いながら言った。 「姉ちゃん、オレもいつか世界屈指のうさぎ騎手になって、牧場の名を上げてみせるよ」 「ふふん、どこまで通用するか見ものだね。……そのうさぎ、今度私にも貸してよ。ちょっと乗ってみたいから」 「姉ちゃんが乗ると、重量オーバーになりそうで怖いけどな」  小さくツッコむミヤビに、アヤミは「何それー!」とふくれっ面で返す。彼女のわがままっぽい振る舞いに、ミヤビは困り顔を浮かべながらうさぎにまたがって走り去っていった。 そんなある日、芸能事務所のスタッフが牧場に訪れ、アヤミを「キッズモデル」としてスカウトする。その人は彼女に向かって、「将来とんでもないスターになれる天賦の才を感じる!」と大絶賛。アヤミは興味本位で撮影に応じると、雑誌に載った途端あっという間にブレイク。カメラの前でうさぎを抱えて微笑む写真は、見る者の心を鷲掴(わしづか)みにしていた。 数年後、キッズモデルとして成長したアヤミは、後輩たちを率いてアイドル活動を始める。ステージにうさぎの耳カチューシャをつけて登場する姿は話題を呼び、最初はそこそこの人気を得た。しかし、アヤミは食べることが大好きで、体質的にも太りやすい。長時間のレッスンよりも、一瞬でお腹を満たすうさぎ型マカロンに心奪われがちだった。 「アヤミちゃん、事務所から体型キープを厳しく言われてるよね」と忠告するスズカに、 「うるさいなあ。だっておいしいんだもん」と言って頬張る始末。  ユイも頭を抱え、「アヤミちゃん、次のライブ衣装が入らなくなるよ!」と焦りつつ声をかけると、 「大丈夫、大丈夫。ステージ衣装は無理やりファスナー閉めればOKでしょ!」  この調子では後輩たちが驚異的な速度で成長していくのも無理はなかった。 やがて彼女たちは武道館ライブを実現し、さらなるメディア露出を果たす。アヤミも必死で食事制限やトレーニングを試みるが、後輩たちの人気には追いつけない。そこへ追い打ちをかけるように、後輩グループの東京ドーム公演が発表される。 「私、もうついていけないかもしれない……」  アヤミは落ち込むでもなく、なぜか呆(ぼう)然(ぜん)とした表情でぽつりと呟いた。そして突然事務所を辞めてしまい、どこかへ旅立ってしまう。 その後、アヤミは海外を放浪する生活を送りながら、各地でうさぎに関するトラブルを解決して回った。旅先の村で野生うさぎが畑を荒らして困っているという話を聞けば、指笛ひとつでうさぎたちを誘導して新しい住処(すみか)へ移動させる。別の町でうさぎの珍病に悩む人がいれば、なりふり構わず駆けつける。「あたし、見るのも食べるのも好きだけど、うさぎを困らせるのは嫌だからね」と笑うアヤミの姿は、次第に「うさぎの救世主」と呼ばれるようになる。一方で弟のミヤビは国内トップクラスのうさぎ騎手として活躍を始め、次々と大会で優勝を飾っていた。頑固な父・ダイスケも、その活躍に顔をほころばせる毎日である。 アヤミはそんな家族の朗報を他国のラジオ番組で偶然耳にすると、「ま、みんな頑張ってるならいいか」などと呟き、相変わらず気まぐれに世界各地を飛び回る。その姿は周囲から見れば強引で無鉄砲だが、それでも彼女から漂う底抜けの明るさは、人々を惹きつけてやまない。こうして、エルフの村娘アヤミの物語は、うさぎとともに今日も思わぬ方向へと転がっていく――。 澄み切った星明かりが大気を蜃気楼(しんきろう)のように揺らめかせ、夜の深さが海原を静寂へといざなっています。遠い異国の街を柔らかく照らす月光のベールに、アヤミの小さな足跡が地図にない道を描いているようです。風が運ぶ香りは、どこか懐かしい牧場の草葉の匂い。振り返れば、まだ見ぬ朝の輝きが、ささやかな希望を抱えながら空を染め始めるころでしょう。小さくとも確かなぬくもりを胸に、うさぎに導かれるまま、彼女はまた明日へと歩みを進めていくのです。 ーーー モデルは武藤アヤミ

コメント (3)

ガボドゲ
2025/03/01 14:04
うろんうろん -uron uron-
2025/02/26 12:33

Epimētheus

2025/02/28 02:23

Yasuyuki Magic
2025/02/26 03:30

Epimētheus

2025/02/28 02:23

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いいねコメントありがとうございます。忙しくなって活動を縮小しています。返せなかったらすみません。

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