光と闇？も仲良くね

「ですから、あなた方は、もっと至高神ファリア様を敬うべきなんです！！」 合同葬儀の後の、精進払いでの席だ。 「世の中は、ファリア様の光の下で、秩序と正義に見守られてこそ、平和が、私たちの穏やかな暮らしが成り立っているのです」 至高神ファリアの少女神官が声の主だ。 先ほどから熱弁を振るっている。 神の声を聴ける神官としてはかなり若い、ダキニラやリリスよりもさらに幼く見える。 只人（ヒューマン）だから見た目通りの年だろう。 賢者の学園ならば初等部在籍ぐらいだろうか。 茶色い髪のなかなか可愛らしい娘だが。 （ちょ、ちょっと、この娘、危なすぎるよ～） そんな少女神官の様子をはらはらしながら見守るダキニラ。 他の神官たちも同様か、または無視か、若さの特権を鷹揚に認めるかなど、 いずれも内心は忸怩たるものがあるに違いない。 立ち居振る舞いからしてかなりの良家のうまれ、それも生まれてすぐ、もの心ついたころから信仰を植えつけられるように大事（厳重）に育てられた娘らしい。 その点、一般人や、ヤクザな生き方をしてきていて信仰に目覚めたダキニラたちとは違う。 信仰に目覚めたばかりなのか、選ばれた存在だという自負のせいか、見た目と背丈に反してかなり態度と言動が堂々として太々しい。 （信仰だけで世の中渡っていけるわけじゃないんだから） 少女神官は、彼女は神に祈るだけで他の技能は持っていないと見える、といっても祈ることで神の奇跡を起こせるのはすごいことなのだが。 まわりには、他宗派の、ダキニラやリリスを含む神官たちが同席しているというのに、臆する様子も見せない。 もっとも、その尊称「至高」、に反してこの国ではファリア神はいまいち信者が少ないのだが。 この国で一番信者が多いのはダキニラの仕える幸運神。 そして、実は潜在的にその信者が多いのではないかと言われるのが…… つかつかと、少女神官は、黒い修道服を着た女性神官の前に立ち寄ると。 「特にあなた！！」 「あん？」 結構な信者がいそうだけど、真摯にその教えを理解して守っている者は少ないだろう、選ばれた存在である、暗黒神ファラリアのプリースト、リリスの前に立ち止まった。 「光があってこそ、影は成り立つ物。その影が光を、ファリア様を敬わないとは何事ですか！！」 「……、ファラリアは影じゃなくて闇だからだいじょ～ぶだよ」 「なっ、何ですか！！その不真面目な答えは！！」 てきと～は返事を返すリリスに、激昂する少女神官。 「・・・・・・、あたいもひとついいか？」 そんな少女をいなすように、ずいっと立ち上がるリリス ハーフエルフにしては体格が良い、何よりもその纏う雰囲気に気おされた様子の少女神官。 （まっ、まずい、こんなところで乱闘にもならない事始めちゃ） ダキニラが慌てて割って入ろうとしたところ。 「ママに甘えられるのは今だけだぞ、ガキ」 意味深な侮蔑な言葉だけを吐いたリリスに 「おっ、おもてに出なさ」 カーン！！ 言い終わる間もなく鍋の音が鳴る。 「ほら！！喧嘩は終わり！！料理できたよ！！お偉いさんも自分で運んでね！！」 緑髪をポニーテールにした料理人服にも見える神官服を着たドワーフ女性が怒っている。 （確かに、料理に光も影も、正義も邪悪もないよね） ダキニラは、毎度ながら料理で場を修める美食の女神の使徒に畏敬の念を覚えるのだった