Prototype 2024-04-15 (1)
「……私は見ての通り、一介の魔術師に過ぎないわ。どこかの術院に籍を置いてる訳でもないから、地位や権力とも無縁だしね」 少し寂しそうな笑みを浮かべながら、彼女は手にしたジョッキの中身を口にする。 まじないや祈祷によって超常の力を操る者たちのことを、この国では魔術師と呼ぶらしい。 ロミみたいな格好をしてる人はあたしの国にもいたので、その辺は何となく察することができた。 しかし、これほどの知識があればひとかどの人物であってもおかしくないだろうに。 まあ、うちの国でも彼らはお山に籠もって権力争いばかりしていたような気がするので、そういった世俗のしがらみに興味がないだけなのかもしれない。