わたしが強くなる理由
小さな頃のわたしは泣き虫で、いつもお母さんの後ろをついて回るような、そんな子供だった。 お母さんは遠い異国からやって来た人で、わたしはその血を色濃く受け継いでいた。 わたしの住んでいた村は砂漠の真ん中にある村で、住む人たちはみんな浅黒い肌に黒い髪をしていた。わたしは髪の色も瞳の色も何もかもが違っていて、そのことでよく近所の子供たちにからかわれていた。やんちゃな男の子たちからいじめられたりもして、わたしはますますお母さんの背中に隠れてばかりいるようになった。 わたしが住んでいた村に、盗賊たちの一団が現れた。雨期が明けたばかりのとある夜に、彼らは突然現れて村に襲いかかったのだ。 村のあちこちに火の手があがって、泣き叫ぶ声やげらげらと恐ろしげに笑う声が響き渡っていた。ほうぼうを逃げ惑う人たちの波をかき分けながら、わたしはお母さんに手を引かれて村中を走り回った。 村に伝わる古い古い神殿の跡地にまで辿り着くと、お母さんはようやく立ち止まった。わたしを建物の陰に押し込んでおまじないをかけると、何があってもここを動いては駄目、と真剣な顔で言い聞かせた。 どこからともなく取りだした大きな剣を片手に、お母さんは押し寄せてくる盗賊たちと戦いはじめた。お母さんはとても強かったけど、次々と襲ってくる盗賊たちを相手に戦いきれなくなって、だんだん傷つき弱っていった。 襲いかかる盗賊たちがいなくなり始めた頃、大きな大きな鉾槍(ハルバード)を持った男が現れて……男は動けなくなったお母さんに向かって、鉾槍を力いっぱい振り下ろした。 盗賊たちによる被害は、それは酷いものだった。 生き残ることができたのはほんの一握りの人たちだけで、お父さんが生きていたのは本当に運が良かっただけだった。大人も子供も、男も女も関係なく殺された。肌の色をよくからかってきた意地悪な男の子も、一緒によく遊んでいた女の子もみんな死んでしまった。 残されたわたしとお父さんの元に、ある日教会からやって来たという女の人が現れた。女の人は見たことのない衣服に身を包んでいて、わたしたちのことを迎えに来たのだと教えてくれた。 女の人はわたしたちを、お母さんの故郷の村へ移り住めるようにしてくれると言った。お父さんが女の人と話している内容を、わたしはどこか他人ごとのような気持ちで聞いていた。