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タフガイに刃物
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「だれか~、わらわを倒すものはおらぬか~」 酔っぱらった、巫女姿の美しい女性がダンビラを振りかざしている。 「わらわは竜じゃぞ。竜を倒すのは、勇者の誉れじゃろうが~」 小柄で細身の少女の見た目からは想像もつかない鋭さで刀が振るわれる。 ばらばらに舞い落ちる桜の花びらがまとめて何枚も両断される。 一振りではない。目にもとまらぬ速さで複数回の剣が振るわれたのだ。 彼女が竜の変化であることは間違いないらしい。 気のせいか、背後に何かのオーラ、東方竜らしき影まで浮き上がっている。 「わららを倒したならば、その者の騎竜になってやるぞ。だれかおらぬか!!」 そこに、すっと、大きな人影が現れた。 「タキザワ殿」 「なんじゃ!!鬼が竜に叶うとでも思うてか」 切っ先を突きつける東方竜ことタキザワだが。 「少々酒が過ぎたようだな」 ゴルドンは、巨体に似合わぬ素早さで動き、刃を素手でつかむと、刀をもぎ取った。 エンハンサーのスキルで、肌を硬化しての早業だった。 抜き身を奪われたタキザワは……。 そのまま、ひっくり返って安らかに寝息を立て始めた。 「ゴルドン様。なんて大きくて勇敢で頼もしいお方……。 私の背中にあの方が乗るのかしら……」 東方竜とはいえ、滝沢竜子も女の子だった。